あらすじ
誰もいないバス停で、バスが止まる。
「ねえ、どうしてだれものるひとがいないのにドアをあけるの?」
幼い私の無邪気な問いに、姉はにやりと笑ってみせた。
「そうだね、なにかみえないものが、のってくるから、そのためにあけているのかもね」
その何気ない言葉は、今も私の奥に潜んで、ときどきひやりと背筋を撫でたりするのだ。
晩夏の夜、わたしは山奥にある家へ帰ろうとバスに乗った。
扉が開くと、熱気を帯びた夜の空気がぬるりと車内に侵入してくる。
森の匂いと、肌に忍び寄る湿度。
ふいにわたしは、昔聞いた、あの話を思い出した……。
夏の終わりの、すこしふしぎな幻想短編です。