あらすじ

オーウェンはごく普通のおっさんなのに聖女に選ばれ、他の聖女たちから煙たがられ、嫌がらせに遭いながらも、神殿の雑用係として真面目に働いていた。下男下女らの仕事も積極的に手伝い、手作りの菓子を振舞ったりして、「俺たちの聖女」と密かに呼ばれていた。  ある日オーウェンは神殿で窃盗の疑いをかけられ、処刑されそうになる。美しい男が現れてオーウェンを助けた。男は神殿で信仰されている雷の神のエルプクタンであり、オーウェンを伴侶として娶ると宣言した。彼は伴侶に酷い仕打ちをした神殿の人間たちを雷で焼き払うと、オーウェンを天界に連れて帰った。  エルプクタンはオーウェンに、素敵な贈り物をくれたり、ふかふかの寝台で寝かせてくれたり、思いつく限りの幸せな生活を送らせてくれる。その上伴侶としての務め、つまり性行為を求めてこない。どうしてだろうと疑問を抱きながらも、一緒に食事をして初めて食事の楽しみを知ったという彼の笑みに心惹かれていく。まるで初めて愛を与えられた子供のようだったから。  そんな折、エルプクタンが他の神を片っ端から襲って領土を奪いまくる危ない神だと、風の神ウキアロワトゥルから教えられ、オーウェンは震え上がる。勇気を振り絞って、年長者として「そんなことはしてはいけない」と説得した。けれどもエルプクタンは悲しげな顔をするだけだった。その表情を見て、事情を聴いてから説教すべきだったとオーウェンは反省する。ちょうどその瞬間、天界にいるために必要な神気が足りなくなり、オーウェンは苦しむ。神気を移すためにエルプクタンはオーウェンに口づけをし、助かる。神気を供給するために、毎晩口づけをすることになる。彼との口づけに淫靡な気分になってしまうことが、悩みの種となる。  とあるきっかけから、オーウェンはエルプクタンが親神に捨てられたという過去を知る。ならば彼が自分に求めていたものは、父性愛だったのだ。だから毎晩口づけをしようとも、決して手を出してこないのだと合点がいく。オーウェンは彼と家族のように穏やかな時を過ごすよう心掛けるようになり、人間界へ帰りたいという密かな望みを捨てた。  けれどもたった一度会っただけの風の神がオーウェンに惚れこんでいて、水面下で工作を進めていた。策略によりエルプクタンは背中の翼を捥がれ、神としての完全性を損なってしまう。完全性を損なった神は消えるしかない。エルプクタンは実は天界から人間界にいるオーウェンをずっと見ていて、どんなに辛い目に遭っても笑顔を絶やさないオーウェンを見て、戦いしか知らなかった自分が愛を知ったのだと告白する。自分を見捨てて人間界に帰ってほしいと言う。  オーウェンはエルプクタンの言葉を聞いて閃く。彼を人間界に連れていき、堕天させる。堕天して神から人間となった彼は消滅を免れた。オーウェンは告白の返事をし、二人は結ばれ、望みだった穏やかな生活を手に入れたのだった。

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カクヨム
カクヨム2024/10/17
  • 現在の作品危ない暴君神がおっさん聖女にだけ優しいです