あらすじ
柏木は蛍研究者の澤村翠とともに、新宿御苑で行われる平塚藤花(とうか)という舞踊家の野外公演の会場に足を運んでいた。燃え盛る炎の廻りを乱舞する蛾の姿を描いた速水御舟(はやみぎょしゅう)の名画『炎舞(えんぶ)』に想を得た新作ということで、先日昆虫の走光性について翠と言葉を交わしたことをきっかけに、自分達が二人ともこの絵の礼賛者であると知った柏木が、公演の告知を目にして翠を誘ったのだった。篝火が灯され、ヒトリガ(火取蛾)やアオシャクなどの大型の蛾が乱舞する舞台のクライマックスで、平塚藤花が舞台下に転落した。舞台中央に設けられた迫(せり)が、なぜか下りていて、落とし穴のような状態になっていたのだ。舞台装置の操作ミスによる事故のように思われたが、柏木は事件性があるとこと直感し、堂島に連絡した。何か決定的なものに触れた気がするのだが、それが何なのかよく分からないと歯がゆそうに語る柏木。彼は真相を究明できるだろうか。