あらすじ
我が子を殺めた罪で服役している男。
男には今や連絡も取れなくなっている義母だけには、伝えておきたい事があった。
どうにかして義母の連絡先を調べると、男は自分を「僕」と書いて妻の母親に向けて手紙を書いて送る。
「どうしても伝えたいこと」の為、話を進める。
はじめに僕が書いたのは「全てのことに理由があり、偶然にも必然が、必然にも偶然が関わって連関した結果である」という前提だった。
それを知る為には、義母の知らないであろう「僕ら夫婦二人の出会いからが良い」と順序立て書き始める。
出会いとなったのはある大学でのサークル。妻となる怜の印象は、はじめ取り立てて気になるものではなかったという。
段々と気になっていくのは「思い返してみると理由があった」と様々な思い出を書き連ねる。
最初はサークル活動で山に行った時の話。
そこで怜話したのは「家出し、山にいたことがある」という話だった。
気になったサークルメンバーはそれについて尋ねてみたものの、怜は理由を答えない。
他にも書いたのは仲良くなり初めてデートに行った時の話だったり、仲を深め互いの家での食事、テーマパークに行った話。
それから結婚に至るまで、子どもが生まれてからの生活にも及ぶ。
「塀の中へ入り、家族が大切だと思い知ったから」としているものの、これらは怜に対しての違和感を感じずにはいられなかったエピソードの数々だった。
そして幸せだった家族が行き着いた最悪の未来、服役している理由である我が子を殺める場面に至る。
この告白をして手紙は終わるのかと思うと「言いたいのはこんな思い出ではない」と前置きし、或る真実の告白をする僕。
自分の犯した犯罪の真犯人とは、違う人であると言う。
この事実こそ、義母に手紙を送っていた理由の一端であり、真に言いたかった事の前に言っておきたい話だった。
僕が「言いたい事がある」として長く思い出を書いていたのは、最も言いたかった点を義母に察しが付くようにする為。思い出を並べることで、自らの人生に思い当たるであろう事柄を思い出させ「真に言いたかった事」の一つである「それが誰か」を理解させたうえで読ませる目的だった。
その真犯人が罪に至ったのは義母に影響を受けたからだと僕は言及し、手紙に書いて並べていく。
最悪な結果に至った理由を考え、書き並べて行く僕だったが「義母の心には届かないであろう」と諦めの気持ちがあった。
一方では希望もあり『疎遠になっている娘との仲を取り持つ事が出来るのではないか』と思っていた。
一縷の望みに賭け、手紙に書き送ってみると義母にはその兆しが見える。
話は良い方向へと向かっていると見えた。
だが他方では、僕と怜には問題が生まれていた。面会には来てくれなくなっていたのだ。
その問題には、刑務所の中で同室だった「K君」という人が関係しているかもしれないと考える僕。
疑惑を抱いた僕はK君の言っていた話に『本当だろうか』と疑問を持つ。「自分は無実の罪で収監されている」と言っていたK。
彼は確か「殺人罪の教唆」の件で服役していると言っていた筈だと思い出す。
色々と考えた僕には、今までになかった感覚を伴った、ある仮説が思い浮かぶ。
僕が推測するK君が考えた計画。
それが『全てに影響しているかも』と考えるのだった。