あらすじ
あやかしと人間が共存する現代。
政治や芸能などあらゆるところであやかしが力を持っている。
高校三年生の糸峰理斗(いとみねりと)は両親を幼い頃に亡くし、叔父家族に引き取られた。
けれど使用人のように扱われ、食事も満足に食べられず、従兄の光には暴力を振るわれて虐げられていた。
言いたいことも言えずに「大丈夫、平気」を口癖に、同じ毎日を繰り返している。
家にお金をいれるために清掃のバイトをしていた理斗は、突然中学時代の同級生である春に呼び止められた。
あやかしと一緒にいた春に、強引に高級ホテルにあるレストランの個室に連れていかれてしまった。
疎遠になっていたときのことを聞きたがる春にたじろいでいると、突然部屋に男が入ってくる。
狐塚屋遠伊(こづかやとおい)と名乗った銀髪に白皙の美貌のその人物は、まっすぐ理斗に向かってきて「私の花嫁」と口にした。
あやかしには自分の妖力と共鳴する霊力を持った人間を花嫁と言うらしい。
そして遠伊はあやかしのトップに立つ狐の一族であり、その当主である狐塚屋家の人間だとわかる。
殴られたあとなどを治癒してくれた遠伊は理斗の名前などを聞いてくるけれど、花嫁と言われてパニックを起こした理斗はその場を逃げてしまう。
わけがわからず逃げ出した先であやかしに媚びへつらう光と顔をあわせてしまい、激昂した光に殴られそうになると遠伊に助けられた。
そのあと何故か強引に遠伊の邸に連れ帰られてしまう。
口数は少ないのにまっすぐに目を見つめてくる遠伊は、頑固な一面で行動を押し通してしまう。
抵抗しても意味がないと悟り、理斗は結局遠伊の言う通りにしてしまう。
連れ帰られて泊ることになってしまった理斗はその晩、久しぶりの温かな食事や風呂で両親を思い出して泣いてしまった。
それを慰められて、母親の形見であるボロボロのハンドメイドのブローチを見られてしまう。
慰めるだけでなく、ブローチを大切に扱ってくれた遠伊に理斗は強引だけれど悪い人ではないのだろうと警戒心が緩んだ。
その晩、夜中に悪夢を見てしまった理斗に遠伊は夜中に部屋に来て添い寝までしてくれた。
けれどことあるごとに「私の花嫁だから」という言葉にモヤモヤしてしまう。
邸にいてほしいという遠伊に学校を理由に断るけれど、結局一日付き合うことになってしまった理斗は花嫁の説明を受ける。
花嫁は相手のあやかしの妖力を高め、男女限らず強い子供を産むことができる。
そして寿命も延びると言われて理斗は動揺してしまう。
自分なんかに花嫁と言って優しくするのは、霊力が目当てなのだと理斗は納得する。
絆されたくないのに甘やかされ、静かな人となりとは思えないスキンシップをされ、理斗の心は遠伊に溶かされていく。
そんなとき母親の形見を光とその妹に壊され、理斗は雨の中飛び出してしまう。
行く当てのない理斗が無意識に向かったのは、遠伊のところだった。