あらすじ

奇妙な成り行きで借金を背負うことになった園山 普人。 彼は借金返済のため、天麻と名乗る男から奇妙な仕事を請け負うことになる。 アパートの一室に置かれたレトロな黒電話。 その電話には社会に生きる弱者からの、相談が寄せられる。 仕事とは、彼らの相談を解決すること。 解決とは相手の納得させること、そのためなら、それが真実でなくとも、道徳や倫理に反していたとしても構わない。 普人は、おかしな電話相談を解決するため奔走することとなる。 《以下は本編の結末を含むあらすじです》  園山 普人は、見知らぬ部屋に拉致され、天麻と名乗る青年と対峙していた。  普人は大学卒業後すぐに就職したものの、数年で退職して今は無職。しかし、持ち前の観察眼を生かして、誰にも知られず競馬で荒稼ぎをしている。  その日も競馬場を訪れていた普人の元に、天麻がやってきて、とある賭けを提案してきた。普人が一着馬を当てたら、一回につき百万円を手渡すという奇妙な物だった。最終的に不思議な成り行きで賭けに負けた普人は、いわれのない借金を背負い、アパートの一室に軟禁されて働かされることとなったのだ。  部屋には一台の黒電話がある。仕事の内容はかかってきた電話に出て、相手の持ち掛けてくる相談を解決すること。どんな方法でも、相手が納得さえすればいい。説明を終えると早速電話が鳴り、普人は仕方なく仕事を請け負うことになる。かかってくる電話はどこかおかしな内容ばかりだった。    一件目は田舎暮らしだという老人からの電話だった。  住んでいる村でひとりの女性に対するイジメが起きているという。話を聞くと、イジメの犯人も被害者も、全員が高齢者であった。引っ越しなどの解決策はことごとく拒否されて、考えた末に普人はスケープゴートを用意する策を漏らす。聞いた老人はすぐさまそれを実行に移そうとする。本意ではないと取り消そうとする普人だが、説得虚しく電話が切られてしまう。後味が悪い解決になったと感じた普人だが、天麻は相手が納得したので問題ないと告げる。    二件目は会社勤めをしているという女からで、他人のメールを盗み読んで殺人計画を知ったという相談だった。勤め先の部長と同僚が不倫関係にあり、同僚が部長の妻を殺害しようとしているのだという。普人は部長には他にも愛人がいると看破し、愛人同士を対立させて、殺人計画どころではない状況を作り上げることを考える。普人の計画通りに進んだことで、相談者の女は楽しみが増えたと喜ぶ。女の目的は不倫関係を眺めて楽しむことだった。    三件目は海に潜っている最中に、船の爆発を目撃したという男からの相談だった。船は爆発直前に何度も錨を上げ下げするという奇妙な行動を取っていたという。船の正体は海底ケーブルを切断しようとしていた工作船であった。工作による事件は決して表沙汰にならないと言うと、男は安心した様子であった。    四件目はイガラシと名乗る若い女からで、失踪した妹についての相談だという。彼女は、妹の失踪は神隠しだという。直前に古びた神社で肝試しをしていた妹は、怪奇現象に悩まされていたという。  普人は、調査のため実際に神社に足を運ぶことにした。すると、そこで怪奇現象に巻き込まれる。途中で合流した天麻によると、この神社は山で死んだ人間を奉るために建てられたものだという。  普人はこの件は超常現象だと判断して、再度イガラシと電話をする。普人は、イガラシの妹は自分の意思で怨霊のもとに行ったのだと推論を述べる。さらに、普人はイガラシをわざと怒らせるようなことを言い、二度と電話をかけてこないように仕向けるのであった。    これらの相談を解決していくうちに、普人は電話をかけてくる相手のほとんどが人間ではないことに気が付いた。最初の相談はイジメに超常的存在から天罰が下された話であり、二件目は男女の不貞に怨念が取り憑いた話、三件目は海底に隠れて暮らす妖怪のもとに人間が現れた話へと姿を変えた。四件目のイガラシだけが、怪奇現象を追いかける人間であった。  それを指摘すると天麻は、この世には人ならざる存在である〝怪異〟がいることを認める。いまや上空から深海まで人間の手の入っていない場所はなく、怪異はその身を隠しながら過ごしているのだという。  また、天麻自身も、理解できないものを排除していく人間社会に対する、怨念が具現化した怪異だと正体を明かす。    天麻は突然、自分も普人の正体を当てると言い出した。  普人はその生まれつきの観察眼という特異な能力に、人間社会になじめず過ごしてきた。人より優れた能力があっても、普人は何の役に立つことも出来ず、それどころかいつも他人から拒否されてきた普人は、人間の社会から隠れて生きてきた。その生き様は怪異とよく似ていた。  普人の中にも、社会に対する怨念がある。普人は相談相手が怪異である可能性を知っていながら、仕事を続けていた。人間に害をなす怪異が、ありのままに存在を発揮するという顛末を、普人は納得して受け入れていたのだ。  天麻は普人に取り憑いた怨念だった。彼は、電話相談の仕事を続けるかどうかは普人の自由だと告げると、普人の目の前で忽然と姿を消してしまう。  ちょうどそのとき、電話が鳴った。普人は電話に出ることもできるし、そのまま全てを忘れて帰ることもできる。  それでも普人は、自分の意思で受話器を取るのだった。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2024/09/30
  • 現在の作品もしもし、此方おかしな電話相談室