あらすじ
日本が昭和と呼ばれていた頃の話。中学三年生の一学期、四方晴彦(しかたはるひこ)は、東京の中高一貫の高偏差値の中学校から、母親の実家のある田舎の公立中学に編入をした。高校進学を一年後に控えた大事な時期に、田舎の中学に編入した理由は、一にも二にもなく両親の離婚だった。離婚により精神的に追い込まれた母親の希望で、母親の実家に一人息子の晴彦も一緒に引っ越すことになったのだ。
登校初日、昼休みに弁当を食べていたら、仲良しグループに入らず、たった一人で弁当を食べている女子生徒が目に留まる。彼女は五クラスある学年で、常に成績トップを収めている吉住路花(よしずみみちか)だった。路花には、顔の左部分に赤くて大きな痣があり、このことで虐められた過去があることも、あとで知る。
朝、早く家の近くを散歩している時に、猛スピードで走り抜ける新聞配達の自転車とすれ違う、その自転車の乗っていたのは、なんと路花だった。驚いた晴彦は思わず、「路花!」と叫んでしまう。これに気づいた路花が引き返して来て、二人は初めて言葉を交わす。
ある昼休み、校庭の隅のベンチで一人弁当を食べていたら、ひょいっと路花が隣に座ってきた。ここで、互いのことを話しているうち、ひょんなことから、晴彦は路花の新聞配達を手伝うことになり、同時に夏休みまでという限定付きの交際が始まった。限定付きなのは、シングルマザーの路花の母親の再婚で、一学期が終わると路花は東京の中学に転校することが決まっていたからだ。交際スタートと同時に路花の強い希望で、交換日記を始める。この交換日記を通じて、さらのお互いのことを深く知ることになる。
順調に二人の交際が続いていた中、とうとう、晴彦の母親に、秘密にしていた路花との交際がばれてしまう。しかも、運悪く、路花の母親の再婚に関する、根の葉もない悪い噂が流れ始める。この噂の元は、路花の亡くなった父親の実家から拡散された、全くのデタラメな誹謗中傷だったのだ。
これが原因で、路花は夏休みを待たずに、しかも晴彦にも何も告げずに、東京に引っ越してしまうことになる。路花が東京の行く日、引っ越しのトラックを必死で追いかけた晴彦は、やっとのことで信号待ちで止まったトラックに追いつき、言葉をかける。このあと、教室に帰った晴彦は席に着くと、机の表面にコンパスの針で、「東京に行っても、私は変わったりしないから」と彫ってあった。
斉藤由貴の名曲、「卒業」の歌詞に乗せて、昭和の中学生の淡い恋が、大人の恋へと成長していこうとしていた。