あらすじ

「……私は神だ」 椅子に座り、膝の上で手を組んでいるその男は、表情を一切緩めることなくそう言った。唯一神、それがこの部屋に―― 「……いや、私が神だ」 「何を言っている、私こそが神だ」 「バカな。神は私だ」 「おいおい、神は私だよ」 「おれが神だ」 「私が神だ!」 「神は僕ですよ」 「おお、我こそが神……」 「神! 神! おおおお私の中に神がおられる! あああぁぁぁぁ!」 十人もいた。 ここはとある研究施設。 ここで主に精神療法を研究している博士は、別室のモニターで神を自称する男たちを眺めていた。 博士は、彼らが本物の神などとは微塵も思っていない。彼らは皆、精神異常者。家族や警察などに依頼され、ここに集められたのだ。一度に十人集まったわけではない。ここでそういった自称神の男たちが集められていると噂を聞き、『では、うちのも引き取ってください』と全国から送られてきたのだ。 しかし、一向に治療が進まず、博士は頭を悩ませていた。そして、ある時ふと思いついた。彼らは皆、自分が唯一無二の神と主張している。話し合いをさせ、自信を失わせることができれば、治るのではないか、と。 もっとも、思った通りに事が運んでも最後には一人だけ神が残るだろうが、まあ、心配しなくてもそこまでうまくは行かないだろう。良くて二、三人治ればいい。また、自分は本当に神なのだろうかと僅かでも疑念を持つようになれば、彼らの妄想症を取り去る糸口になる。博士はそう考えていた。 『では、じっくりと話し合ってくれ』 部屋の天井に設置されたスピーカーを通して博士はそう言った。もっとも、彼らはすでに話し始めていたが。

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小説を読もう2024/08/01
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