あらすじ
ある商人は国の支配者に言った。
「あの魔女の要求を拒んではなりません」
しかし支配者たちは言った。
「法に依らねば国が成り立たない。一個人の我儘だけを聞くわけにはいかない」
「そんな道理のわからぬものは放っておきなさい」
商人はしれっと返した。
「私の富を見なさい。私の成功を見なさい。すべては魔女のおかげです」
なおも言い募る支配者たちに商人は決断を迫った。
「魔女がこの国に居る限り、この国の繁栄は約束されるのです。もし魔女を排斥するというのであれば、私もこの国を捨てましょう」
魔女の件はともかく、商人に逃げられるのは困る。支配者たちは折れた。商人の弁については半信半疑なものが大半であったが、商人の言ったことは驚くべきことに事実であった。
それから半世紀。
魔女は小銃弾の生産数の桁をみっつよっつ増やし、自己緊縛軽量砲を開発し、アルミヘッドの直噴ディーゼルエンジンを量産し、真空管の不良率を押し下げた。
駆逐艦は6万馬力の蒸気タービンで35ノットを出し、戦闘機は音速を超えた。
商人はやがて老いたが、死ぬ間際に、病をおして支配者たちのもとに最後の念押しに訪れた。
「けして魔女を粗略に扱わぬよう…」
それが25年ほど前。この話を聞いた宇宙人は思った。
「それってどこの座敷童だよ」