あらすじ
死んだおれは驚いた。そう、死んだこと自体に驚いたのではない。死ぬことは苦でも何でもなく、恐れてもいなかった。むしろ生き続けることが、とまでは言わないが、おれは死を待ち望んでいたのだ。
妻と息子に先立たれてもなお、長生きした身だから、そんな考えを抱くのも不思議ではないだろう。
驚いたのは他のことだ。まず、天国に来られたことにはほっとした。長生きした分だけ人に迷惑もかけたし嫌なこともしただろう。もっとも、警察の世話になるようなことはしなかった。税金をちょろまかせないかと画策したことはあったが、つまりまあ、平均的普通人だったのだろう。そして、それは天国入りの基準を満たしていたと。
おれがここに来られたのなら、妻も息子もここにいるはずだ。会いたい。なのに……