あらすじ

人類がコンピュータを発明し、それを駆使して宇宙に進出してから700年あまりが過ぎた。後に「最終戦争」と呼ばれることになる二十一世紀中盤に発生した戦争は世界に大きな傷跡を残し、百億近かった人口は数億人にまで減少した。これは自らが持つ技術と、それにより獲得した力に対して、生物としての人類が極めて脆弱な存在であることを思い知らされる事態だった。 戦争の爪痕が癒え、ようやく人類全体が争いをなくし、共に未来を考えていくことが出来るようになったのは、二十三世紀のことだ。ゆるやかな連邦制は、やがて世界統一国家となり、言語や様々な制度が次第に統一されていった。一方、過去から続く地域の様々な文化は、多様性を維持する観点から、その多くが保存されている。こうした体制が確立し安定した二十四世紀になって、人類は、かねてより議論されてきた究極の問題に結論を出すことになる。結論には十年あまりを要したが、その結果として全ての人の遺伝子を改良し、恒久的にそれを維持していくための枠組みについて合意がなされたのである。つまり、人類誕生以来、ずっと「神」に委ねられてきた人類の未来を自らが決め、そしてそれに責任を持っていく選択を人類は行ったのだ。  それから三百年ほどの間に、人類のあり方は大きく変わった。遺伝子の改良は単に人それ自身の能力向上に留まらず、既に大きく進歩していたコンピュータや人工知能、そして高速な通信網などとの直接的な接続を実現している。「インターフェイスコンポーネント」と呼ばれる遺伝子群が、すべての人に対して組み込まれ、それが遺伝によって子孫に引き継がれるようになった。これにより、外部の情報が意識に拡張現実として投影できるようになり、生活や様々な分野でのビジネス、学習、研究のありかたを根本的に変えたのである。その後の百年ほどは、人類における創造の爆発期、ネオ・ルネッサンスと呼ばれる時代となった。 「最終戦争」のあと長い間止まっていた宇宙開発も二十三世紀には再開され、二十四世紀初頭には、それまで理論的に検討されてきた超光速航法、いわゆるワープ航法の基本技術が確立された。その後、百年ほどの間に人類は、太陽系から半径五百光年ほどの領域にまで進出。居住可能な惑星を発見し、またテラフォーミング技術を駆使したり、遺伝子改良によって自らを環境に適応させたりして定住している。こうした惑星間の物流や人の移動を支えるのが、恒星間航路の宇宙船である。 こうした宇宙船の運航を支える様々な人材の育成は人類全体の重要な課題となり、それを担う中核機関として、スペースアカデミーが設立された。 スペースアカデミーは地球近傍にあって、地球と太陽の重力、遠心力がバランスする第2ラグランジュ点(L2)に建設された巨大な宇宙都市である。ここでは一般の高校教育にあたる基礎過程、いわゆる附属高から大学にあたる専門課程、そして様々な研究者を育成する研究課程までの一貫教育を提供する。スペースアカデミーは単に宇宙船乗りの育成にとどまらず、宇宙に関する最先端の研究や様々な技術開発を担う総合的な研究、教育機関なのである。 この物語は、27世紀にスペースアカデミーの基礎過程で学ぶ学生たちのエピソードだ。彼らは、やがて宇宙で活躍することを夢見て、超難関といわれる試験を突破して入学してきたエリートである。だが、周囲のそんな見方とは関係なく、多感な青春時代を謳歌する高校生たちなのだ。

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カクヨム
カクヨム2018/08/20
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