あらすじ

探偵事務所で働く双子の高津千晴と千雨。ある日、千晴が以前所属していた劇団からリハーサルへの参加を頼まれる。山荘を貸し切って行う二泊三日の体験型マーダーミステリーで、観客役をしてもらいたいという。 当日、二人は妹の万桜を連れて赤石山脈の中腹にある業荻山荘へ行く。ある事情から劇団を離れた千晴だが、舞台演出家の円東たちは昔と変わらず接してくれる。 公演のあらすじは、デジタルデトックスを目的に集まった人々が閉鎖された空間で殺人事件に巻き込まれるというもの。そのため観客である千晴たちもスマートフォンを預ける。 リハーサルが始まり本館と離れを案内される。和やかな夕食を終えて紅茶を飲んでいると、死体メイクを施した円東が駆けこみ、多目的室で俳優の宇原が死んでいると言う。千晴たちは探偵として現場へ急行する。遺体は首の骨が折られ、後ろへ顔が回された状態でソファに頭を置かれている。口は透明な粘着テープでふさがれていた。 千晴は警察を呼ぶように言い、プロデューサーの大井がスマートフォンを手にするが電波が妨害されていて通じない。 劇団員たちのアリバイをたずねたところ、容疑者は俳優の神谷、亜坂、五十嵐の三人に絞られる。第一発見者の円東も疑わしいが、千雨はあえて挙げずに宇原が殺害された理由を探る。 宇原は仲間たちの陰口を言っており嫌われていた。一方で金銭的に困窮する劇団のために、公演チラシやポスターのデザインを無償で手掛けていた。 スマートフォンを預けた箱は何者かに奪われており、外はひどい雷雨で近くには熊が出るという。千晴はジャミング装置を探すが見つけられず、多数決で各自部屋へ戻ることになる。 翌朝、千晴は万桜に起こされる。千雨がどこにもいないという。不安がる妹をなだめて部屋を出ようとすると階下から声がする。 向かってみると物置で俳優の桁山が死んでいる。体を何度も刺されて大量に出血しており、口には宇原同様に粘着テープが貼られている。桁山は厳しい稽古で知られており、千晴もかつて泣かされた一人だった。 大井は早朝に桁山と犯人の会話を扉越しに聞いており、千雨らしき気配を察知していたと教えてくれる。千雨の姿はどこにもなく、千晴は嫌な予感を覚える。そこで神谷が疑いを晴らすために千晴に従うと申し出る。 山荘に神谷と劇団員たちを残し、千晴は車で警察へ向かうが土砂崩れで道が通れない。引き返すと大井の遺体がギャラリーで見つかる。口封じに殺害されたらしい。 犯人を見つけてスマートフォンを預けた箱と電波妨害装置の隠し場所を自白させるしかない。千晴は神谷と情報を整理するが、途中で五十嵐が千雨を探しに行こうとする。二手に分かれて捜索することにし、千晴は離れで物音を聞く。その後、本館の横で千雨のシュシュを見つける。居間の窓がすぐそばにあり、千晴たちが引き返してきた時にそこにいたのは神谷だった。 結局収穫は得られず休憩することになり、神谷は数人の仲間と台所へ飲み物を取りに行く。 休憩が終わり、千晴は神谷と推理の続きを始める。彼を疑う千晴はさりげなく自白を促そうとするもうまくいかず、流れで芸能界をやめた理由を告白する。 その後、千晴は神谷から「視野を広く持て」と言われるが、真意が分からずすれ違ってしまう。昼食を挟んで別行動をとった神谷は離れで遺体となって発見される。千晴は自分のせいだと消沈し、代わりに万桜が場を仕切る。容疑者は円東と五十嵐の二人だが、円東は「五十嵐の代わりに罪をかぶってやろう」と言って離れから去っていく。 ずっと考えていた千晴は万桜を残し、劇団員たちを本館へ戻らせる。千晴の声に応えるようにして千雨が天井から降りてくる。犯人の顔を見る前に離れの天井裏へ逃げていたのだ。これまでの情報を頭に入れた千雨は推理を披露しに行こうとするが、千晴は彼女の安全のため、本館の様子を探ることを提案する。 千雨を離れに残して本館へ戻ると、木野が包丁で円東を脅していた。犯人なら千雨をどうしたのか知っているはずだという。とっさに千晴は「千雨は生きています!」と叫ぶ。その直後、待ちきれなかった千雨が現れて木野は包丁を手放す。千雨に指示され、包丁を台所へ持っていった千晴は時計が五分進んでいることに気づく。神谷はこのことに気づいていたため「視野を広く持て」と言ったのだ。 居間へ戻った千晴は推理を披露し、真犯人は五十嵐だと指摘する。台所の時計がずれていて有利になるのは彼だからだ。劇団の未来を悲観し、終わらせるために殺人事件を起こした。口をふさいだテープは同一犯だと示すためで、少しでも世間に劇団の名前が残るように演出していた。スマートフォンを預けた箱は宇原が頭を置いていたソファの中にしまわれていた。 千晴は神谷が自分より先に真犯人に気づいていたことから、彼の存在を深く胸に刻むのだった。

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カクヨム2024/07/14
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