あらすじ

元詐欺師の女がいる。元、だ。……じゃあ今は、誰なんだろう? 「ずっとずっと、歩いて来たんだ……そうしたら、わたしはわたしが今誰なのか、わからなくなった」 幼い顔をした彼女が、その深い深い黒い眼をふわりと上げた。 「わたしがわたしを捕まえる。―――そうしたら、この逃亡劇はきっと終わり」 どうかな。そう簡単に、君は捕まりそうにない気がするけど。 灰色の眼をした彼との時間が過ぎ、黒髪の青年と離れ海と空を越えた彼女は、心の底から疲弊したまま『逃亡』をはじめていた。 血の繋がらない弟、腹に一物抱えたカメラマンたち、送りようのない手紙を抱える学生、スランプのモデルに雨と霧の街の保安官。彼らの眼の前に、或いは誰かの心の先に、彼女は通りかかり、そして去って行く。 嘘と詐欺のあとに、残ったものの話をしようか。 大丈夫。怖がっていていい。 この手をしっかり握っていて。 これは君が逃げた跡であり、君がどんな風に世界を愛していたかという話なんだ。 大丈夫。これだけは言える だからきっと覚えていて。お守りのように胸に刻んでいて 君はすべてを失くしたわけじゃないんだ 君がいる。君がいた。 ―――その世界を、愛そう。 ―――前作、『マクデブルクの半球』『アステリスクの邂逅』『セントエルモの光跡』の続編です。 どうぞ、前作を読まれてからお読みください。

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小説を読もう2016/02/13
  • 現在の作品セイリオスの逃亡