あらすじ
「んー、あなた、よくない霊に取り憑かれてるわねぇ。詳しく言うと、昔の……そう、お侍さんね」
「やっぱりそうか!」
と、おれが思わず声を上げたところ、占い師はビクッとして、少し身を引いた。
え、まさか正解? といった顔を一瞬見せたので、やはりこの占い師はインチキで適当なことを言ったのだろう。しかし、我ながら都合がいいもので、おれは占い師にそう言われたことで確信めいたものを抱いた。
おれは幽霊に取り憑かれている。
異変を感じたのは一ヶ月くらい前だ。当初は、体に纏わりついているこの倦怠感は仕事の疲れだろうと思っていたのだが、一人なのに周りに誰かの気配を感じる瞬間があったり、ふと死にたいという希死念慮を抱いたり、ある夢を見たりと、最近では感じたその人の気配というのがどうも男であるようだと徐々に明らかになってきていたのだ。
そして、占い師に幽霊が取り憑いていると言われたことをきっかけに、その幽霊の姿が夢の中に色濃く現れるようになった。
髷を結い、白装束を着た男。侍の霊だ。しかし、おれに取り憑いたその理由がわからなかった。当然、墓を蹴り倒すなど罰当たりなことはしていないし、肝試しに行った覚えもない。質の悪い風邪を引いたと思ってひとまずは理由は置いておくにしても、この状態のまま放置して治る、つまり成仏するかどこか他に行ってくれる保証はない。
だから、おれは夢の中でその幽霊に話しかけてみることに決めた。何か未練があるのかもしれない。