あらすじ
「えー、これからうちの相撲部屋は養豚場も兼業することになるから。そういうことで、よろしく」
おれは驚いた。以前、親方がおれたちにそう言ったときは、いつも気難しそうな顔をしているのに、うちの親方もなかなか面白い冗談を言うんだなぁ、と思った。しかし、まさか本当に豚を育てることになるとは。
なんでも知り合いから良い豚を安く手に入れたらしい。うちの相撲部屋はおれ含めてたった四人しか所属しておらず、最高位は幕下。それも先輩一人だけという、自他ともに認める弱小相撲部屋だ。ゆえに後援会の援助も期待はできず、金に困っていたのかもしれない。養豚場の話は我々を豚だと揶揄した皮肉とさえ思ったが、ある朝、稽古場を乳離れした八頭の子豚がうろついているのを目にし、さらに親方から豚たちを家族のように扱えと言われ、これは夢でも何でもなく親方は本気なのだと、おれたちは思い知った。