あらすじ
魔力全盛の時代。大国エリシアは魔王軍との激しい戦いを強いられていた。衝突が起きるたびに残るのは、対戦の疲弊感と敗北に対する暗い感情、そして命を落とした者たちへの深い悲しみであった。
そんな中で発足した、大国エリシアの4大戦力のうちの1つ、ノワール。何であろうと殺傷をしないという戦い方を可能にしたのは、魔力が衰退した世界で新たに主流となった、精神の力、霊力。それを育むカギとなるのは、人間とのつながりであった。
それから300年の時が経ち、16歳にして魔王の座に君臨した1人の男がいた。その男の名はアバウト。かつて最強と呼ばれた魔王が封印された地に生まれ、闇の世界の頂点を目指して生きてきた彼は、1晩で2国を我が物とする最強メイドを従え、新たなる魔力の時代を築き上げる、はずだったのだが...。
「オレ、魔王やめるわ!」
わずか2年でその座を降りたアバウトは、禁断の魔法を発動して己の所有する魔力をすべて封印し、新しい人生を歩むことを決意した。その理由はただ1つ。青春という輝かしい経験を得るためである。
ところが、突然のピンチが彼に襲い掛かった。目が覚めれば戦場のど真ん中だったのである。大地をとどろく爆発音。早くも終了を迎えかけた彼を助けたのは、銀色の長髪をした浴衣姿の女性であった。
戦場に鳴り響くは大砲ではなく花火の轟音であれ。
きらめくは銃の発光ではなく大輪の雫であれ。
流れるは人々の血でなくロマンチックな空気であれ。
1人の元魔王の青春への物語が、平和への思いを胸にほのぼのと紡がれていく。