あらすじ
桃園花凜(ももぞの かれん)は誰もが羨む美少女である。その美貌は言わずもがな。均整の取れたスタイルも大和撫子のような性格も、すべて神に作られたかのように完璧だ。そのうえ高層タワーマンションに住んでいるのだからもはや人としての格が違うと言って過言ではない。クラスメイトたちから厚い信頼を寄せられる百戦錬磨の恋愛相談役で、彼女に相談すればどんなカップルでも復縁できるという噂もある。人望も容姿も性格もお金さえも持っている彼女はこの世のすべてを手に入れているかに思われたが、一つだけ、彼女が持っていないものがあった。
それは『愛』だ。
一人暮らしは寂しい。彼女の家は国内でもトップクラスの富豪であった。超がつく大豪邸に住み、たくさんの使用人を雇い、お抱えの運転手さえもいる。
けれども、仕事が順調である代償だろうか。桃園花凜は両親の愛を知らずに育った。
寂しいながらも暮らしは充実していた。
自分は一人で良い。恋愛相談なんてやっているけど、結局は相手との相性だ。性欲と承認欲求の相性でしかない。彼らはそれを愛なんて呼んで自分を誤魔化しているだけだ。
両親の間に、そんなステキなものがあるわけがないのだ。
寂しさを紛らわせるために気持ちを捏造するくらいなら私は独りでいい。
桃園花凜は孤高であるがゆえに完璧なのだ。
……そう思っていた。彼があらわれるまでは。