あらすじ
エステル・エインズワースは人の役に立つのが好きだ。
だがしかし、彼女は致命的なまでの人見知りだった。
人の役には立ちたいが、人と関わり合いを持ちたくない。社交的な人見知りであるエステルが考え出した苦肉の策が【お悩み相談郵便箱】だった。郵便箱には毎日村人からの悩みが寄せられる。エステルは村人たちの悩みを一つずつ解決しながら、個人的には充実した日々を過ごしていると思っていた。
そんなある日、エルフィンストーン領一の美女と謳われる双子の姉エスメラルダが、公爵閣下の嫡男の花嫁候補として屋敷に招かれていった。有頂天になって帰ってきたエスメラルダは、妹のエステルに毎日毎日自慢話をして聞かせてくる。
「ああ、イライアス様のあの涼やかで麗しいお顔といったら──」「弟のアーネスト様も負けず劣らずの美男子で──」「閣下はわたしのことをとても気に入ってくださったご様子なの──」
程なくして、エインズワース家に一通の手紙が届けられる。差出人は、イライアス・エルフィンストーンだ。親交を深めるため、まずは文通からはじめようという誘いに、エスメラルダは再び舞い上がる。
しかしながら、エスメラルダには致命的なまでに、文章を書く才能がなかった。
「わたし、知っているのよ、エステル。あんたがあの郵便箱の主だってことをね」エスメラルダは不適な笑みを湛えながら言う。「あんたの秘密をバラされたくなかったら、わたしの言う通りにしなさい!」
かくして、エステル・エインズワースは、姉のエスメラルダに成りすまして、次期公爵閣下と手紙のやり取りをすることになったのだった。