あらすじ

緩やかに朽ちていく工場の廃墟、折れた鉄骨、赤錆、夏の喧騒。  絵の具の鯨と啼きやまないヴァイオリンの弦。 「僕はここで絵を描いてるんだ。なんの意味もない絵を描いている」  緑と赤錆と画材のにおいを肺に詰めて浅く呼吸をしていた、短い夏。  彼は意味のない絵を描き続け、俺は意味のない音を奏でた。時を浪費する。命をもてあます。なまえを教えることもなく、誰でもないように振る舞って。 「僕らは、ふだの提げられた歯車のなかにいるんだよ。廻り続ける。一生を掛けて。死に絶えるまで廻り続ける。そのことに意味なんて言葉を宛がえてみせる、人生の意味だなんて綺麗な言葉を」  どうにもならない生きづらさを感じていたふたりが、ほんのひと時だけ歯車から逃げだして、おんなじところに身を寄せただけの。 「僕はここにいるつもりだよ。夏が終わるまで」  それでも、あの夏。  俺とあんたは確かに。      ――――息をしていた。 「君を歓迎する」

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カクヨム
カクヨム2018/09/20
  • 現在の作品鯨の骨が朽ちるまで