あらすじ
道で倒れていた不思議な生き物を拾ったら……朝にはイケメン男子になっていた!?
その子は悪魔も食べれる「夢喰いバク」だっていうんだけど……
あの……
きょ、距離が近い!
※ネタバレ注意
<キャラクター設定>
◆一ノ瀬 結愛(いちのせ ゆあ)
主人公の女の子。地味な中学2年生。身長155センチ、髪の毛を二つ結びにしている。
いつでもどこでもすぐに寝られるのが特技。
両親が忙しく、ほとんど一人暮らしのような生活を送っている。
そのため料理などの家事は全般得意。
両親が自分を愛してくれているのは知っているし、困らせたくなくて、いつも聞き分けの良い子に徹していた。
ただ、本音はとても寂しい。
話を聞いてほしい、作った料理を食べてほしい、一緒にいてほしい……。
そんな気持ちを抱えるあまり、悪夢を見ることが多く、特技の割にあまり熟睡できずにいた。
そんなときに道に倒れていた【夢喰いバク】であるレムを拾う。
見捨てられなかった結愛は世話するために連れ帰るが……かわいい動物だと思っていたら、イケメンな男の子なんて聞いていない!
しかし自分の無意識でもあった願いを叶えてくれるレムにどんどんと絆されていく。
レムといることで、だんだんと自分の気持ちを表に出していけるようになっていく。
◆レム
もう一人の主人公である男の子。サラサラで通りのいい髪。青みがかった瞳。見た目年齢は結愛と近い。170センチ。
【夢喰いバク】の一族。夢を食べる一族だが、その中でも悪夢を主食にできる希少種。
そのため様々な人に重宝され利用されてきた。
しかし自身の願望のために利用してくる相手の多さや、金儲けに使われそうになったことに嫌気が差し、逃げ出した。逃げる途中で力尽きたところを結愛に拾われる。
お礼とばかりに結愛の悪夢を食べてあげたら、美味しくて驚いた。
しかも結愛は見返りを求めず優しくしてくれる。そんな風に扱われたことは初めてで余計に驚いた。
また彼女の無防備さが放っておけず、大事に思うように。
結愛はオレが守る。ずっとそばにいてあげる。絶対さびしくさせない。
大事に思う相手の夢はとびきり美味しく感じるのが夢喰いバクの性質だが、それを抜きにしても他のバクになんて分けてあげないと独占欲を抱いている。
ちなみに相手を眠らせる・夢を食べるにはその人に触れられればいい。
しかし結愛に対しては額やまぶた、頬にキスをすることが多い。レムがしたいから。
◆高柳 広樹(たかやなぎ ひろき)
結愛の幼なじみ、クラスメイトの男の子。172センチ。
野球部のエースで人気者。
結愛とは隣の家であり、よく気にかけている。
レムの登場により少し焦り始めた。
◆メアン(短編では出番なし)
レム同様、夢喰いバクの一族。レムの友人。168センチ。
軽い調子の男の子。行方不明になっていたレムを探しに来たが、結愛から「いい悪夢の匂い」を嗅ぎ取り、興味を持つ。
レムと表立って敵対する気はないが、味見くらいさせてくれてもいいのにと思っている。
結愛に気にかけてもらってから、悪夢に関係なく結愛自身に惹かれるように……。
<長編化した際のプロット>
◆プロローグ
悪夢を見ている結愛。
鬱蒼とした森の中で、たくさんの黒い手に追い回される。必死に逃げるが夢の中で上手く動けない。
手に捕まり、どんどん森の奥へと引きずられ、助けを求めると――ふわりと、まぶたに優しい感触。
次の瞬間、手はたくさんのショートケーキに。
空がパステルカラーな水色、降ってくるキャンディー、ふわふわの綿あめな地面。
急に変わった夢の様子に呆然。
◆目覚め
目覚めると、すぐ近くに綺麗な男の子。
結愛は一瞬みとれるも、見知らぬ人物に飛び起きる。
「ねえ。君、名前は?」
「え……と、一ノ瀬結愛……中学二年生、です、けど」
「結愛。いい名前」
テンパり謎の自己紹介をしてしまった結愛に、やはりとろけるように笑う男の子。
「オレは、レム。結愛が昨日拾ってくれた、バクだよ」
「バク――?」
結愛は昨日のことを思い出す。
◆回想~昨日~
雨。学校の帰り道。
結愛は道に倒れている、見たことのない生き物を見つける。(四つ足、図体はクマに似ている。鼻はゾウに似ている)
保健所か動物病院か……悩む結愛に、謎の生き物は嫌がる素振り。
仕方なく一度家に連れ帰り、様子を見てから病院に連絡することに。
「もう少しだからね」
抱き上げ、優しく声を掛ける結愛。
◆回想終わり
介抱している内に寝落ちてしまったことを思い出す。
半信半疑なまま結愛はレムの話を聞くことに……しかし時間がないため、まずは朝ご飯の用意だ。
両親が仕事でおらず、テキパキと料理を用意していく結愛。
レムの分も用意してあげると、レムは不思議そうに。
「……いらない?」
いつも一人だったので誰かにも食べてほしかったが、迷惑だったかもしれない。そうしゅんとする結愛の様子を見て、レムは結愛の手を軽くつかみ、反対の手でひょいと卵焼きをつまむ。
「……すごい。おいしい」「結愛、料理上手だね」
結愛は手放しで褒めてくれるレムにじわじわと赤くなる。それと同時に、自分は誰か、いや、両親にも食べてほしかったのだ、だから一人でも自炊をしていたのだという自分の気持ちに気づく。
◆説明
「オレたちバクは、正確には夢喰いバクって言われてるんだ」
「オレたちは夢を主食とする生き物でさ。珍しいしあんまり表立っては知られてないと思う。オレみたいに悪夢も食べてくれる夢喰いバクはさらに希少で、色々需要もあるんだよね」
「だけど扱いが悪くてさ。お金儲けに使われそうになるし、我慢できなくなって逃げ出したんだけど、行く当てもなくて……雨が降るわお腹が空くわで力尽きちゃったってわけ」
レムの説明を聞いて、もしかして自分の悪夢も食べてくれたのでは? と結愛は思い当たる。肯定するレム。
心の底からお礼を言う結愛に、今まで偉い人たちに利用ばかりされてきたレムは驚き、照れてしまう。
時間もないのでひとまず学校に行こうとする結愛だが、レムはすでに結愛と離れがたく思い始めている。
「……オレも行っちゃだめ?」
「だ、だめだよ。私は学校だし……逃げてきたってことは他の人にバレちゃだめなんでしょ?」
「うん……」
しょげたレムがかわいく思えてしまい、頭を撫でてあげる結愛。
学校へ。
◆学校
幼馴染みの広樹と挨拶。玄関先でのレムとのやり取りを見ていた広樹が、あいつは誰なのか、大丈夫なのかと結愛を心配する。同い年なのにしっかり者の広樹は時々お兄さんみたい。
「ごめんね。大丈夫。心配ないよ」
「でも……」
「何か困ったら、ちゃんと広樹のこと頼るから」
「……絶対だぞ?」
ため息をついて結愛の髪をぐしゃぐしゃにする広樹。頼りになると思ったら、急に子供っぽいことするんだから!
……そんな様子を見ていて、面白くないクラスメイトの女の子が三人。
◆学校2
放課後、結愛は三人の女子に校舎裏に呼び出される。
「一ノ瀬さんって、広樹くんと仲良いよね」
「どういう関係なの?」
「広樹くんは誰にでも優しいんだから勘違いしないでよね」
ただの幼馴染みだと説明しようとする結愛だが、三人は聞く耳を持たない。
苛立った女子の一人が結愛の肩を押す。
このままでは昨日の雨でぬかるんだ地面に転んでしまう――が、次に訪れたのは背中からすっぽり包まれたような温かさ。ぎゅ、と抱きしめられる感触。
「結愛」「遅いから迎えに来ちゃった」
助けに来たのはレムだった。一度夢で繋がっているため何となくの場所ならわかるという。
「……で」
急に声の温度が低くなり、さらに結愛を強く抱きしめるレム。
「結愛に何か用?」
怖じ気づいた女子たちは逃げ去っていく。
◆帰宅
誰もおらず、シンとした家の中。それでも今日はレムがいる。それだけで少し、家の様子も明るく見える。
「夜ご飯も結愛が作るの?」
「うん。レムの分も作るね」
「……うん。結愛が作るもの、食べたい」
「期待されると緊張しちゃうなぁ」
「オレも手伝っていい?」
「え、いいの?」
「うん。結愛の力になりたい」
「……えへへ。ありがとう!」
一緒に料理したり、他愛ない話をしたり、結愛は徐々に満たされていなかったものが満たされていく。
◆就寝前
レムは言っていなかったことがあると言う。
「オレたちは本来、夢を食べるだけなんだ。良い夢に書き換えるのはまた別の力を使うから……、そっちは完全に善意でやることなんだ。特別ってこと」
それを聞き、今朝もレムは善意で助けてくれたのだと知り、結愛は笑顔でお礼を言う。
「ありがとう。あ、ていうか夢を食べるんだからもしかしてカレーはいらなかった⁉︎ 私の夢を食べた方がいいのかな……? 食べられたら夢は何も見なくなるってこと? それだけなら私は困らないだろうし、レムが食べたいなら……あ、でも私、最近悪夢のせいで途中で起きちゃうことも多くて……レムには不便かも……」
レムとしては、今までのように自分を利用してこないか、それを確かめたかった。
しかし結愛は自分のことよりレムの心配ばかり。
たまらなくなり、顔を覆ってため息をつくレム。
「本当に……結愛はどこまで……」「そんなんだから、放っておけないんだよ」
きょとんとする結愛に、レムはそっとまぶたにキスをする。
不思議とどんどん力が抜け、眠たくなる結愛。
レムにお姫様抱っこをされながら、優しい声を聞く。
「おやすみ。良い夢を、結愛」
◆夢の中(結愛、はっきりとさびしさを自覚する)
結愛はやはり悪夢を見ていた。荒れ果てた草原でひとりぼっち、そこに襲い来る獣。
悲鳴を上げ目を覆った結愛を、レムが颯爽と助け出す。
気づけば空は満点の星空に、地上はキラキラと眩しい夜景に。
そんな中をレムにお姫様抱っこされて飛んでいる、そんな事態にはしゃぐ結愛。
「ねえレム! 飛んでる!」
「夢だからね」
そうして空のデートを堪能しながら、レムが聞く。
「……結愛。もしかして、さびしい?」「いつも一人でがんばってるんだろ? ……結愛が悪夢を見る理由はそれかもしれないと思って」
――大丈夫だよ。一人でいるのは慣れてるし。家事もちゃんとできるし。ママもパパも忙しいけど、頑張ってるの、知ってるから。そんな二人を困らせたくないから。私は大丈夫。
そう笑って言いたいのに、レムの前では嘘がつけない。
悩んだ末に震える声で小さくうなずいた。認めて、自分は一人がさびしかったのだとようやく自覚した。
レムはそんな結愛を優しく抱きしめてくれる。
「ありがとう、レム。来てくれて……悪夢から助けてくれて。……でも、どうして……?」
レムは悪夢を食べるだけで、良い夢を見せるのは特別だって言ってたのに。どうして今も助けてくれたんだろう。
「……結愛が初めてだったんだ」「結愛のこと、もう離してあげない」
意味深に微笑むレム。理解しきれず、ご飯のためかなと思う結愛。
「でも私、レムに助けられて……レムと一緒にいられて、さびしくなくなってるの。そうしたら悪夢も見なくなって、レムのご飯がなくなっちゃうかも……どうしよう。――レム?」
「あのさ……あんまりかわいいこと言わないでくれる?」
レムは結愛とおでこを合わせ、大丈夫だと諭す。
「むしろ結愛にはとびきり優しくて甘い夢を見させて……たくさん甘やかしてあげたいくらいなんだから」
◆朝
寝起きにレムの甘い「おはよう」
これからもこんな日が続くのだとしたら心臓はもつのかな……。
今日は休日だけど、やはり両親は仕事でいない。
さびしさを自覚したことでしゅんとする結愛の頭を撫でるレム。そこへピンポーン。来客だ。
出てみると、一人の見知らぬ男の子。レムとはまた違った系統のイケメン。彼は軽い調子で言う。
「レム、いる?」
◆来訪者
レムの友人だと名乗るメアン。彼も夢喰いバクだという。
ということは、レムの仲間だよね……と気を許しそうになる結愛の髪にメアンはキスをする。ぴゃ⁉︎
「いい悪夢のにおいがする」
硬直していると、後ろからレムに引き剥がされる。ぎゅっと抱きしめて独占欲を丸出しにメアンを警戒するレム。
そんなレムにメアンは降参ポーズ。
「でも結愛ちゃん。悪いこと言わないからやめといた方がいいよ。こいつ、色んな奴に狙われてるから」
レムは偉い人たちや、【夢喰い狩り】にも狙われているというのだ。夢喰い狩りは、人を強制的に眠らせることができる夢喰いバクを人類の脅威とみなし、駆除する目的の組織だという。レムといるなら、そういう人たちの争いに巻き込まれることは必至だ。
しかし結愛は引かない。
「レムにはたくさん助けてもらったの。だから今度は私が助ける番だよ!」
◆レムの独白
レム視点。
今まで散々利用されてきた。上から目線の奴も多かった。悪夢を食べるだけじゃ飽き足らず、好きな夢を見せるように迫られた。眠らせることや夢を見せるにはエネルギーが要るため応えられないときもあったが、理不尽に怒られた。悪夢を見なくなったらもう用がないと捨てられたこともあった。あげくには金儲けに売られそうになった。
人間にがっかりし始めていたレムだが……結愛は見返りを求めず優しくしてくれた。
そんな人は初めてだった。
今も、助けると言う。
『レムにはたくさん助けてもらったの。だから今度は私が助ける番だよ!』
……そう言う結愛は、夢の世界よりキラキラして見えた。
♦︎独白終わり もう一人のヒーロー登場
騒ぎに気づいた広樹が「何やってるんだ?」と割って入ってくる。
退散するメアン。
そこで初めて自己紹介するレムと広樹だが、レムはその間も結愛にべったり。
「ありがとう、広樹」
「いいよ。……結愛のためならいつだって助けるし……」
感謝する結愛と、照れた様子の広樹にモヤモヤするレム。
そこへ破裂音が。
♦︎夢喰い狩り
メアンの言っていた夢喰い狩りが襲ってきた!
とっさに広樹がボールを投げて相手を怯ませる。三人は揃って逃走。
どうにか撒いたところで結愛は再びお礼を言う。
一方、レムは「近い……」と二人の距離感が面白くない。
そこに追いついてきた夢喰い狩りが後ろから結愛につかみかかるが、「だから近いってば」とレムは相手をつかみ返し強制的に眠らせる。
結愛に近づいていいのは俺だけ。
♦︎ピンチと打開
広樹の野球技術とレムの眠らせる力で逃走を繰り返すが、数があまりに多い。
しかもレムの眠らせる力はエネルギーを使う。
とうとう力尽きるレム。お腹が空いた……動けない……もう一人も眠らせることができない……。
ピンチだ。どうしよう。
結愛は閃く。お腹が空いて動けないなら。
「私の夢を食べて!」
特技はいつでもどこでもすぐに眠れることなのだ。それならレムがエネルギーを使うことなくご飯を食べることができる。
「結愛はどうして、そこまでしてくれるの?」
「レムを助けたいから……ううん。私がレムと一緒にいたいから……!」
さびしい。一緒にいたい。結愛は今まで隠して誰にも言えなかった本音を、自分の言葉で打ち明けることができた。
♦︎解決
レム視点。
特技を活かし、眠りにつく結愛。呆れる広樹。
大事に思う結愛の夢はレムにとってとても美味しく、力を蓄えるには十分すぎるほどだった。
広樹に結愛を預けてレムは追ってきた夢喰い狩りを一掃する。
「結愛をお願い」「容赦、しないから」
追い払った後、結愛を見るとまだ悪夢が残っているのか、眉間にシワを寄せている。
レムは結愛の額にキス。
安らいだ顔になる結愛にレムは微笑む。
「お前……!」と驚き咎めようとする広樹にレムはツーンとソッポを向いた。
♦︎エピローグ
結愛は家の中で目を覚ます。無事なレムと広樹の姿に安堵。
広樹は結愛が目覚めたことを確認し、後ろ髪引かれる思いで部活へ向かう。レムに「変なことするなよ」と釘を刺しながら。レムはやはりソッポを向いているが。
もう今日はこのまま休んでいようとレムは結愛に持ち掛ける。しかし休日だし昼食や夕飯の買い出しもしなければと主張する結愛。
「レムの好きなもの作ってあげるから」
「結愛」
「うん? 何?」
「……。いいよ。わかった。オムライス食べてみたい」
「オムライスね!」
やる気を出す結愛に、レムは囁く。
「……夜はいっぱい甘い夢を見せてあげるから覚悟しててよね」
「ひぇ……」
今でも十分甘い……これから一体どうなるんだろう。