あらすじ
太陽系の開発が進む時代。人間は脳刺激冬眠技術を用いて太陽系内を移動していたが、過酷な労働環境が多いためAIが労働の大半を担っている。中でも情動育成を目的に人間に似せた固有の擬体を備えた人工知能は、人工人間――AHと呼ばれ、オセアニア連合では既に一定の人権を与えられて地球でも存在感を増していた。その一人、無性型AHミアリーは、正看護師となった暁に、精神科病棟に入院しているダクという盲目の青年芸術家を担当することになる。自ら両目を潰したダクは、『雨』という題名の、脳に直接受信させる脳刺激感覚芸術制作に没頭しているが、頻繁に憤怒して自らの耳や鼻を削ごうとするため、介護と監視が必要だ。自身の肉体を損なう行為は、擬体を有するがゆえに情動を有する自分に誇りを持つミアリーには理解し難い。しかし好奇心旺盛なミアリーは逆に彼に興味を持ち、『雨』制作を手伝う中で、気難しい彼から母親にまつわる雨の思い出を語られるほどの仲になる。しかし、ダクの隣室の青年患者ジャーリが嫉妬して……。