あらすじ
梅雨真っ只中の6月。
春先まで無縁と思っていたリングの中央に彼女は立っていた。
「さあさあ。生徒の皆さんに父兄の皆さん。それに校外の関係者一同。お待たせしました。本年度春の校内大会個人戦を開催させていただきます」
これからリングで繰り広げられるのは生徒同士の真剣勝負。
怪我どころか最悪の場合には命を落とすことすら辞さない力比べが行われようとしていた。
「まずは赤コーナー。現時点での1年生筆頭。名門穂村の跡取り息子の登場です」
実況から先にコールを受けて赤コーナーを歩いている少年の名はアンディ。
正式名称は「アンドリュー・アケビ・ホムラ」と言い、アンディの他にはAA(ダブルエー)ホムラと呼ばれている。
この大会を開催している八郷学園では英国数社理──受験5教科とは別に戦技5教科が存在している。
アンディはその中でも武器術、魔術、法術の成績が入学時点から特出しており3年生の上位グループと比べても遜色ない。
2年生までが参加する今回の大会では新入生ながら優勝候補の筆頭とされており妥当な勝ち残りであろう。
だがこれから呼び出しを受ける彼女は違う。
何故なら──
「次は青コーナー。いかに2年生とはいえ誰が彼女の勝ち残りを予想できたであろうか。落ちこぼれが集う櫛灘寮の中の更に落ちこぼれ言われた彼女に何が起きたか。拳以外に多くは語らぬ寡黙な図書委員の登場です」
実況が言うように彼女は落ちこぼれの中の落ちこぼれと呼ばれる生徒だったからだ。
念押しをすると落ちこぼれなのは戦技おいての話。
普通の教科はむしろ優等生の側なのだが勉強よりも戦後を教える学校としての側面が強い八郷学園では悔しいだろうが仕方がない評価である。
そんな彼女は事実として1か月間の戦いを勝ち抜いてこの決勝の舞台に上がっている。
落ちこぼれと呼ばれていた宮本静子(みやもと せいこ)が短期間でどのような方法で勝ち残ってきたのか。
これから振り返っていこう。