あらすじ
僕は今現在、大阪市内に鉄筋コンクリート四階建てのマンションを一棟所有している。築年数三十年。戸数は僕の住んでいる部屋を含めて十六戸。小規模な賃貸マンションである。
僕は決して大家さんがやりたかったわけでも、ましてや大家さんに憧れていたわけでもない。ただ母から譲り受けたもので、気が付けば大家さんになっていた。 こういうふうに書けば、傍目から見れば随分恵まれているように見えるだろう。実際、外で「私、マンションのオーナーやってます」と口外すれば、多くの人から「いいなあ」と羨望の眼差しを向けられる。僕自身もかつてはそんなふうに軽く考えていたが、実際にやってみて、それは大きな誤解であるとわかった。内情はそんなに甘いものではなかった。