あらすじ
チューニングの合っていないラジオから流れてくるノイズに耳を澄ませているうち、気づくと主人公は幻想世界へと誘われている。自分自身が幻想世界をさまよっている時もあれば、その世界の誰かにすっかり成り代わっている時もある。夜になると徘徊をはじめるデパートのマネキンの一幕、廃墟で一心不乱に踊る一組のタンゴダンサー、ガス燈の灯る路地をさまよう怪物じみた紳士、母親に何かを訴えようと懸命な瀕死の赤ん坊、失恋の痛みをかかえて自暴自棄のギタリスト、飼い主を求めてバーに突撃する鳥の運命。ラジオのノイズに紛れてやってくる断続的な幻想世界は、一見支離滅裂な無数の物語でしかないが、それらはどこか繋がっていて、やがて主人公の心とも同化していく。