あらすじ
転勤家族の家に育った皆部颯太と桜井美沙子は、父の赴任先の岡山で、小学六年から高校卒業まで隣同士に住み、家族ぐるみで親交を深めていた。
颯太と美沙子は、高校卒業と同時に、互いに秘めた想いを心に留めたまま、夫々が父親の実家に移り住んで大学に進学する。
前後して、両家の父親も転勤になり、皆部家と桜井家の交流は途絶えた。
父の転勤による転居と転校は、颯太に故郷と思える場所を与えなかった。それは颯太の恋愛感情にも影響した。
颯太は中学生の頃から、女子に好きかと問われると、好きでも「好き」とは云わず「嫌いじゃないよ」と答えた。それには転校に伴う颯太なりの拘りがあった。
颯太は大学院を経て、システムエンジアとして大企業に就職する。将来を嘱望され、社命で大学院のMBA取得コースに通うことになる。
ゼミが一緒だった紺野理奈と同棲を始めるが、暫くして、二年間の地方支店駐在勤務の特命が下る。転勤は無いと思っていた颯太には意外なことだった。
同じ頃、理奈にも好条件の配属先が決まり、ふたりは同棲を取りやめる。
颯太は駐在先の中国支店から大阪支社に移り、駐在期間も残り少なった頃だった。
会社の仲間と行ったホテルのビュッフェで、美沙子と奇跡のような再会をする。
再会は、時を費やすことなく、過ぎ去った空白の年月を消し去った……。
颯太は、転勤も悪くはないと思うようになっていた……。(全55章)
※フィクションです。実在の物とは一切関係ありません。