あらすじ
高校生の桜珈那(さくらかな)と遊佐藍(ゆさあおい)はピアノに青春を捧げてきた。
海のすぐそばにある高校に通いながらレッスンに励む日々の中、迎えた合唱コンクール。
珈那が何よりも欲しかった伴奏者賞は藍に取られた。
「私にはピアノしかないのに。」と落ち込む珈那は微笑みながら賞状を受け取る藍の美しい姿を遠目に眺め、ひたすらに嫉妬していた。
そんな時、珈那はふと思い立った。
もしも珈那と藍が双子だったら、いとこだったら、ふたりはライバルではなかったのかもしれない。お互いが一番の理解者で、誰よりも味方のような存在でいられたのかもしれない。
そしてそこからたった一つの答えに触れることになる。
双子にもいとこにもなれない、ならその代わりに藍の一番大切な人になればいい。
その瞬間、彼女になりたいと初めて願ったのだった。
彼女になれば、それだけで珈那は藍の守りたい存在だから。誰かが珈那に刺すほんの小さな棘の一つ一つにも藍は自らの身体を犠牲にしてまで珈那を守り抜いてくれるだろう。
だって彼女だもん。
そんな無駄なシナリオを立てた私は、そのシナリオ通り恋に落ちた。
徐々に縮まるふたりの距離。
ふたりの親友である菫(すみれ)や透空(とあ)の存在。
思春期真っ只中の高校生四人はとめどなく流れる日々で何を思うのか。一人一人違う性格を持った彼らがどのようにして交差していくのか。
そして迎えた卒業式。高校生最後の日に誰かが動き出す。
大人という壁を目の前にした彼らは、本当の恋とは何なのか葛藤し自らの想いを吐き出してゆく。
果たして彼らはどんな結末を選ぶのか。
嫉妬にまみれてもなお誰かを想って前を向くことはできるのか。
そして初々しさに溢れたラブストーリーの中で描かれる筆者の恋愛観。そこに寄り添う音楽、ピアノという存在。
そんな甘酸っぱい雰囲気を存分楽しめる短編小説だ。