あらすじ
通りすがりに、たまたま見つけて立ち寄った魔法雑貨の店にて、 黄土色のショートヘアに、まるで人形のように美しい紫色の目をした久世理人《くぜりひと》は、吸い寄せられるようにショーケースの中に飾られている、ある物を見詰めていた。
それは、何とも色鮮やかで、爽やかな赤いフレームのめがねだった。
普段、めがねなどかけないのだが、何故か、この時ばかりは妙に惹かれていた。
「そのめがねが、気になるかね?」
店主らしい、白髪の老人がそう、両手を後ろに組みながらも、穏やかな口調で理人に問いかけた。
なんだか怪しい雰囲気を漂わせる老人に問いかけられ、控えめに微笑んだ理人は曖昧に返答。
「ええ、まぁ……」
「それなら……このショーケースの中に入っているめがねを、君に譲ろう」
老人はそう言うと、徐にポケットから取り出した鍵で以て、ショーケースを開ける。
そして、その中で飾っていた、赤いフレームのめがねを手に取り、老人は理人に手渡した。
「お代は、いらないよ。もともと、このめがねには値段が付いていないからね」
老人はそう、にこやかにお断りを入れる。理人が、穿いているジーンズの後ろポケットから財布を取り出そうとした時のことだった。
「……では、お言葉に甘えて」
申し訳なさそうに理人は返事をすると手を伸ばし、老人からめがねを受け取る。
「そのめがねには、不思議な力が宿っておる。それは決して負の象徴ではなく、持ち主を危険から守ってくれる優れものじゃよ」
「そうなんですね……なら、このめがねを、お守り代わりにしたいと思います」
優しそうな老人からめがねを譲ってもらった理人は、気さくに微笑みながらもそう返事をすると、店を後にしたのだった。
そんな冒頭から始まるファンタジー短編小説。完全書き下ろしです。