あらすじ
翼は、傷心。
それまでの人生において、『どれだけ心が傷付いて来たか』を、翼は表わす。
大きく傷付けば、大きく翼は生える。
何度か傷付けば、何度か翼は生える。
心模様が激しく揺れ動くように傷付けば、美しい模様が浮かび上がるように、翼は生える。
だが、翼は容易に生えない。
ありきたりの傷心では、生えない。
それこそ、一週間ほど飯が喉を通らないような、街から色彩が全て失われるような、それぐらいの傷心でないと、翼は生えない。
小さい翼でも、最低限、それぐらいの傷心はいる。
ならば、大きい翼は然り。
美しい翼も、然り。
[ただ、その傾向が、自殺者増加と正比例していることは、指摘できよう。
翼を生やした人数の増加と、自殺者の増加が、
グラフで合い比べると、正しく比例している。
よって、自己嫌悪、自己憎悪、自信喪失といった、
各自のメンタル衰弱が、何らかの作用を及ぼしていると考えられる。
《翼を生やす》のと《自殺する》のは、
『メンタル上、紙一重のもの』と捉えられる。 ]
博士論文を、一度は提出した。
テーマは、[翼発生現象についての経緯、現状及びそれに対する一考察]。
担当教授は、難しい顔をする。
「博士論文の補足して、追加レポート出してくれたらええよ」
ラバネッリは、教授のこの提案に、飛びつく。
教授と念入りに打ち合わせをして、補足レポートに盛り込む内容を詰める。
翼の生えた人々は、翼の機能を活かして、主に次の三つの職に従事する。
一、運送業
二、旅客運輸業
三、保養業
運送業、旅客運輸業の聞き書き調査の状況を思い出し、保養業の状況を詳しく思い出す。
ラバネッリは、保養業界の会社【ビアッリ・リラックス】を聞き書き調査した時の状況を、詳しく思い出す。
まず、ビアッリ・リラックス三人衆の一人、メラーの翼よる施術に付き合う。
行き先は、彫師のところ。
刺青を入れるところ。
メラーは、黄色の翼格納リュックを開く。
開くと同時に、縮こまっていた翼が、広がる。
途端、青龍がのたうつ、くねる。
翼の動きに合わせて、青い龍が息づく動く。