あらすじ
「あのぅ」
とある夜。公園のベンチに座り目を閉じていた男はそう声をかけられた。
男は「ひっ」と悲鳴を上げなかったものの突然のことゆえ、ぶるっと体が震えた。だから『驚かせやがって……いや、驚いてないし』と怒りと虚勢を交え、やや睨むように見上げたわけだが、なんてことはない。相手は腰の曲がったひ弱そうな老人であった。口をもごもごと動かし、顔を俯かせている。男は害はなさそうだなと少しほっとし、訊ねる。
「あー、なんですか?」
「そのぅ……」
と、はっきりしない老人に男は苛立った。若いこっちと老人のそっちじゃ時間の価値というものが違うんだ。さっさと喋りやがれ、と。