あらすじ
「あの、すみません。あの」
「ん?」
「あ、あの、謝らせていただけないでしょうか」
「はぁ? 何を謝れって?」
「い、いえ、あの、謝らせて欲しいんです」
「だから、ん、謝らせて……?」
「はい、すみません。謝らせてください……」
彼は『いや、もう、すみませんて謝ってるじゃないか』と言い、この場を和ませてやろうかと思ったが、その男の卑屈な笑みを見てすぐに考え直した。電車から駅のホームに降り、数歩歩いたところで後ろから声をかけてきた男。やや俯き、浮かべるその笑みは『自分は優しい人間です。だから危害を加えないでください』と言っているようで癪に障る。おれはこの類の人間が嫌いなんだ。胸がむかむかする。
と彼は相手に伝わるよう不快感を露わにした。
「ひっ、あ、あの、謝らせてください……」
「あぁ? だからさぁ」
……何をだ? 彼はそう思った。