あらすじ

深夜、客を乗せたそのタクシーは、ふと違和感を覚えた。 その客は「適当に走ってください」と言っておきながら、外の景色を眺めることなく、どこかソワソワして、またチラチラと外よりも車内を気にしているようであり、車載カメラと目が合うと、さっと顔を逸らした。 ――これはあれだな。 と、タクシーは思い、声をかけた。 「お客さん、トイレをご希望ですかぁ?」 乗客は「えっ!?」と背筋を正し「いや、その……」と口ごもると身をドアの方に寄せ、ゴツッと頭を窓に預けた。 一応、否定と捉えたタクシーはそのまま走り続けた。わざと意地悪くそう訊ねたのには理由があった。すでに今月、やらかされていたのだ。気づいたのは乗客が降りた後。シートの汚れを取るのが大変だった。マジックハンドでそれを掴んだときの感覚を思い返すと怒りが湧き上がり、クラクションを鳴らしてやりたくなる。

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小説を読もう2024/05/12
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