あらすじ
『舞台の上で死にたい』『それが役者としての本望』と、ベテラン俳優の彼は酒の席で事あるごとにそう口にしていた。自分の発言に酔いしれているのか、それを肴に酒を呑む。あるいは、酒を呑むことその罪悪感を和らげるために言っていたのか。死などいつでも受け入れてやる、と。
その真意は本人にもわからないが、なんにせよ不摂生が祟り入院し、余命あとわずかとなった。
こうなってくると『舞台の上で死にたい』という思考。それは湿度を伴う言葉となり、習慣となり、性格、行動と、そしてこれは運命なのだと本人は疑わなかった。信念というより執念。何が何でも舞台の上で死にたい。伝説を残すのだと息巻き、関係者に片っ端から連絡を取った。