あらすじ

【あらすじ】  駅から徒歩十分程度。大井町線を降りて、商店街を抜けるとそこには品川区と大田区の狭間にのんびりとした空気をまとった住宅街が広がっている。夏の過酷な暑さを超え、昼間以外は特に冷房がいらなくなった。朝の光差し込む町、窓が開き風を通す空間。太陽光を背に浴びていた。夏の強い日差しの焼けつくような強いものではなく、温もりをもって温めた肌をやや寒くなってきた風が冷やしていく。  買い物をする主婦の間を抜け、駆け抜ける子供を避ける。耳に突っ込んでいたワイアレスイヤホンを外して足をとめた。 『キャトルセゾン中延』    築数十年のお世辞にもピカピカとは言えないが、それなりに新しい絶妙な建物が目的地だ。横についている階段を規則正しく登っていった。かんかんと靴が鉄筋コンクリートを鳴らす音が、やや静かな住宅街に嫌なほど響いている気がした。二つ目の踊り場で登るのをやめ、目指す部屋へと足を向けた。「304」とひっさげられた扉の前でインターホンを押す。   応答なし。  もう一度インターホンを押す。  応答なし。  僕は少しため息をついて、持っていたレジ袋を二つ右手に持ち替えた。ドアノブを捻ると不用心にも何の引っ掛かりもなく扉が開いた。  一つ目のレジ袋の中には住人のために買ってきたお昼ご飯のお惣菜。もう一つの袋には、多種多様なハーブに空っぽの小瓶が五つ、鳥の羽が二枚に、木の根が立派なものが一つ、そしてこれは何かの毛皮だろうか。それらが透明度の低い灰色の袋に詰めこまれている。 大学生もとい短期アルバイトの僕は、勝手知ったる家に容赦なく入り込んだ。  大学三年生の夏空が秋めく頃から冬の訪れを感じるころまで、僕は不思議なアルバイトをした。そうこれは僕が〝魔女のアルバイト〟として過ごした数か月の物語だ。 【文学フリマ東京38 出店のサンプルです】 ・文学フリマ東京38 え-09 猫背と珈琲 にて上巻を頒布  下巻は文学フリマ東京39にて頒布予定です

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カクヨム
カクヨム2024/05/07
  • 現在の作品「中延四丁目 キャトルセゾン三〇四号室」には魔女がいる