あらすじ
時計のアラームで目が覚めると、懐かしい見慣れた天井がそこにあった。中学を卒業してから絶縁状態の実家の俺の部屋の天井だ。
これは夢なのかと思い、目をこすり顔面も両手でこする。夢にしては皮膚への感覚がしっかりとある。
何かがおかしい。混乱する脳。混乱しながらも、周りを見る。やはり俺のよく知っている部屋。実家暮らしをしていた中学生時代の俺の部屋。
気配を殺してベッドから降りた俺は静かに移動を開始した。
部屋から洗面所へ行き、鏡を見る。そこに映る俺の姿は、中学の頃の金髪少年だった。
やはり夢か……そう考えながら鏡に映る自分の姿を見ていると洗面所の扉が開いた。
扉を開けたのは妹の樹里。姿は俺と同じで幼い。小学生の頃の妹だ。
妹は俺の存在に気づくと、眉間にシワをよせ、嫌悪感剥き出しで俺を睨む。
そして一言も喋らずに扉を閉めた。俺はすぐに扉を開け、トイレへと行く妹の背中を見ながら、自分の部屋に戻りベッドに座り状況を整理する。
夢にしてはリアルすぎる。妹の俺に対する態度。はっきりとした意識。もしかして……過去に戻った? そんなことが現実的にありえるのか?
俺の本来の姿は、斉藤祐一(さいとうゆういち)二十八歳だ。
俺に何があった? 少し考えてみよう。
……。
……。
……そうか、絶対にそうだ。俺が過去に戻ったのは、不幸になっていた幼馴染の月野宇華(つきのうか)を救うためだ——。