あらすじ
推理小説と言えどリアリティーは重要だとの信念から、犯罪も実践してみてから書くと決めたまだ作家の卵だった浅草在住の赤井川創語は、大学の作家志望仲間のひとりがコンテストで受賞した上、創語の想いを寄せる娘沙希と付き合っていて、妬みと羨望からその彼を強盗を装って殺害しネタ帳などを奪う。
創語は卒業後それらを使って賞を獲りミステリー作家としての道を歩き始める一方で、その傷心癒えぬ沙希と結ばれる。
時を経て著名人となった創語が取材旅行中、追随していた出版社の担当女性が氷塊の中で窒息死する不可解な事件が起きた。
旅帰りの後にも創語の周辺で、ボウガンでの射殺事件、宅配物での爆殺事件のほか、誘拐された被害者が身代金受渡現場で爆死させられる事件、更にその誘拐犯も毒殺されるなど謎の多い事件が続く。
警察は別々の所轄で起きた事件のため所轄署毎に捜査を進めたのだが決定打を放てないでいた。
そこに警視庁でさえ一目置く探偵岡引一心が加わる。
一心は、創語の著書が夫々発見されているという共通点を見つけ、連続殺人ではないかとの立場で調査を進めるうち、各被害者がひとりの女性桃川心美に何らかの危害を加えた或いは目論んでいたのではないかと疑問を抱く。
さらに突っ込んだ調査により、心美は沙希と殺された恋人との間にできた子で、乳児のうちに捨てられていたと判明する。
その後警察が目星をつけた被疑者までもが貯水槽内に溺死体で発見される。
そのような状況下、創語自身が連続殺人の犯人だとし夫々の事件をつぶさに書き記した手紙を残して自殺してしまう。
心美を守ろうとして殺人を計画し、実行犯を仕立てて犯行に及んだと書いていた。
創語の葬儀も終わり主犯死亡で事件は決着かと思われたのだが、一心は遺書の中に一点の嘘を見抜いていて、主犯は沙希だという事も掴んでいた。ただ、自首するのを待っていたのだった。
捨てた我が子を命がけで守ろうとした哀れな母親の顛末だった。