あらすじ
嘽(せん)皇国を治める剋帝(こくてい)姫(き)舜(しゅん)は、この世に存在するまことしやかなる存在が見えすぎるほどだった。
目の前にどれだけの美貌の持ち主がいようが、その顔は靄で覆われて、更には黒い蟲が張り付いて、とても見れたものではない。舜には皇后を含む五人の妻がいたが、誰一人として食指が働くことも無かった。
それ故か、明君と呼ばれるほどの皇帝でいあっても、影では『種無し』などといった不名誉極まりない噂まで出回るほどだった。
更には、舜は謎の病に犯されて日に日に身体は不調を訴える。腕の立つ侍医にも、不治の病であると言われ、『呪い』なのではないのかと侍医は匙を投げる。
そこで、侍医は古い資料を漁った末に、一つの当てを見つけてくる。
それは、古く――それこそ八代前の皇帝から辿り着いた『禍祓士(まがはらいし)』なる一族、姚家であった。
そうして呼ばれた姚家の一人――姚劉伶は颯爽と現れた。黒い道袍(どうほう)に身を包み、白い仮面を身につけた女。
流麗の顔には黒い靄も蟲も無い。舜は瞬く間に興味を抱いたのだった。