あらすじ
―― 機関車は、ゆっくりと動き出した ――
*ネタバレが含まれます*
高校生の結妃は最近、学校に行きたくないと思うようになっていた。
母は学校を休ませてくれず、通学のためいつものように駅へと向かう。
そして駅の人混みの中で、急激な動悸と息切れに見舞われてしまう。
そんな結妃の元へと走ってきたのは、奇妙な機関車だった。
蒸気機関車のような外観でありながら、すす汚れ一つ無く、煙も出ていない。
その機関車が近づいてくるにつれ、動悸が落ち着くのだった。
望む限りどこまでも旅ができます。
どうぞ、お乗りください。
降りてきた車掌らしき男に、そう告げられる。
そして、結妃がその得体の知れない機関車に乗り込むと、何の前触れも無く出発してしまった。
車掌によれば、これは不安な気持ちを吸い取る機関車なのだという。
そんな不思議な列車で、不思議な駅に停車していく。
そして車掌さんが、列車を待つ人を半ば強引に機関車に乗せるのだった。
灰色の駅で列車を待っていたのは、結妃が唯一友人と呼べる少女、遥。
大きな木が生えている駅で乗り込んだのは、親も教師も友達も嫌になったという少年、翔。
大きなパイプオルガンのある駅では、駅員である結妃の父に遭遇する。
しかし父は、乗りたかったわけじゃないと言い、その機関車で移動することはしなかった。
結妃は乗客たちの言葉を思い返し、考えを巡らせる。
思い切り楽しむためには、思い切り苦しむ必要もある。
知らない駅で列車を降りるには、知らない列車に乗るのと同じくらい勇気がいる。
結妃は、自分が機関車に乗ったのは逃げ出したかったからだと気付く。
逃げ出す勇気すら無かった自分を後押ししてくれたのが、車掌さんだったのだ。
結妃は逃避行に見切りをつけ、他の乗客と一緒に帰路につく。
正体不明、行き先未定の機関車をめぐる、少し不思議な物語。