あらすじ

大学病院に勤務する医師、黒田遥子は長年にわたる睡眠障害に苦しんでいた。ふらつく身体を抱えながら激務をこなす毎日。休職や勤務時間の短縮を願い出るが人手不足を理由に病院側には受け入れてもらえない。  疲労と体調不良がピークに達していたある日、遥子は自分が執刀医を務めるオペで思わぬミスをし、その責任を取って勤務先の大学病院を去ることになってしまう。  鬱々とした気持ちのままただ自宅に引きこもるだけの毎日。だがそんな折、遥子は自分が妊娠していると知る。相手は恋人であり元の職場の上司でもある佐藤洋介だった。失職直後の妊娠発覚。自分はこれからどうすればいいのか。遥子は混乱し事実を洋介に明かせないまま時間だけが過ぎてゆく。  妊娠している実感などまるでないまま定期検診に通っていたある日、遥子はエコー検査のモニターを見つめる担当の産科医師に驚愕の事実を告げられる。 「胎児が消えている…子宮がもぬけの殻になっている……」  起こり得ない奇怪な出来事に騒然とする診察室。どうにか事を穏便に済ませようと必死になる医師を尻目に遥子はすんなりとその事実を受け入れる。哀しいとも恐ろしいとも思わない。そもそも今の自分が子を宿すなど分不相応もいいところではないか。数日後再び診察を受けるよう医師に提案されても従わなかった。  気持ちを新たに不眠治療に専念する遥子。担当の精神科医Rの勧めで『MPDノート(Mental Picture Dairy:心の絵日記 )』をつけるようになる。  手記ははじめ病状やありきたりな毎日を綴るものだったが、次第にその内容は忘れかけていた幼少期の記憶を辿るものに変わっていき、遥子は消えた赤ん坊の謎が自分の幼少期のある出来事に起因しているのではないかと疑念を抱くようになる。手記が進むごとに疑念は確信へと変わっていき、遥子は戦慄しながらも筆を止めることができない。  そんな折、遥子の町にある事件が起こる。厳戒態勢の中、遥子は家の中にたった一人閉じ込められてしまう。極限の緊張と不安の中、遥子は持て余した時間をやり過ごすべくMPDノートを開く。  もうこれ以上筆を進めたくない。過去のことを思い出したくない。けれどそんな思いとは裏腹にノートはどんどん走り書きで埋め尽くされていく。パンドラの筺を開けるかのように思い起こされていく遥子の過去。そこで明らかになった恐るべき秘密と消えた赤ん坊との繋がりとは?  ……ホラーともサスペンスとも区別のつかない狂気の世界をお楽しみ下さい。 *縦行で書いていますので、縦読みする事をお勧めします。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2022/09/21
  • 雪の音
  • 現在の作品雪の音