あらすじ
「イチゴンザレス、です」
「いや、それは ‥ 」
‥ 分かる。
なんで、イチゴンザレスが、『現実化して、存在してるか』と云うのが、問題。
イチゴンザレスは、ミカッパと並ぶ、ゆるキャラ案。
有力候補にまで上がったが、最終的にプレゼンに出したのは、ミカッパ。
イチゴンザレスは、ミカッパに比べて、かわいさが足りなかった。
「なんで、イチゴンザレスが、生きてここにおんねん?」
「分かりません」
「ワシも、分からんねヤ」
ヨシノとイチゴンザレスが、揃って答える。
ミラノ(ミカッパ)のプレゼン資料は、リュースケのノートパソコンで、
イチゴンザレスのプレゼン資料は、ヨシノのノートパソコンで、
各々、独立して作っていた。
‥ ああ ‥ なんや分かったような気がする。
「ヨシノ」
「はい」
「お前の使っていたプレゼン・ソフトは、何や?」
「センパイとおんなじやつ、です」
「いつも使てるプレゼン・ソフト、やないんか?」
「こっちもプレゼンに掛ける可能性あったから、
『センパイのソフトと合わせといた方が、ええかな』と思て、
センパイからもらったソフトで作ってました」
‥ ああ ‥ それでか。
「 ‥ それやな」
「どれです?」
「PP」
「えっ?」
「プレゼン・パスポート」
「センパイから、もらったソフト」
「元凶は、そいつやな」
ヨシノは、小首を傾げる。
「はい?」
「いや、PPが元凶」
「いや、意味が分かりません」
「俺もよう分からんのやけど、
PPに載ったゆるキャラは、現実化するらしい」
「そんなアホな」
ヨシノが笑い飛ばそうとした時、リュースケの胸元が震える。
ガサゴソと、微かに音を立て、動く。
リュースケのYシャツの、第二ボタンが外れる。
ジリジリ、ジリジリ、外れる。
第二ボタンが外れると、一呼吸置く。
一呼吸置いて、そいつは急に、顔を出す。
バッと云う風に、顔を出す。
オレンジ楕円形で、頭に水平に乗せた、緑の五芒星。
確かに、ボタンを外さないと、顔を出せない。
「よっ」
そいつは、ヨシノに挨拶する。
ヨシノとそいつの眼が、合う。
ヨシノはそのまま、眼をズラして、リュースケの眼を捕らえる。
「センパ~イ」
「なんや?」
「これ、何ですか?」
ヨシノは、リュースケの視線を捕らえたまま、黒目だけをピョコンと一回、下方に動かす。