あらすじ
これは三つの『ショウヒン』から成る物語。
一つは蜘蛛。
狂気を演じることはできない。
仮面は死が訪れた時に、必ず外れてしまうものである。
化粧は雨に打たれれば、流れ落ちてしまうものなのだ。
ゆえにこそ神は我々をこう呼ぶ。
道化師――ピエロと。
有象無象の愚民共よ。
命尽きる時まで踊り、歌い、叫び、喚くがいい。
それが賢明な行いだと、心の底から信じるのならば。
真に能ある者よ。常日頃から君子たらんと研鑽を積んでいる者よ。
望むなら、この籠(かご)を覗いてみるがいい。
さすれば世界の真理に至る扉への道が、目の前に現れることだろう。
諸君等の旅が、実(みの)り多きものになることを私も望んでいる。
あなた様に、幸があらんことを。
一つは蝶。
多くの者は、才能がないことに苦しむ。
自分にしかできないこと。自分だけに与えられた役目を全うすること。
決められた道をただ歩くだけの人生――それはどんなに素晴らしいものだろう。
動物で例えるなら、孔雀。虫で例えるなら蝶。
彼等は美しさという、唯一無二の贈り物(ギフト)を持っている。
では孔雀は幸福なのだろうか。蝶は苦など知らずに一生を終えることができるのか。
有象無象の愚民共はそんなこと、一度たりとも考えもしないだろう。
私の疑問を笑い飛ばして、踵を返して自身の人生にさっさと戻っていくことだろう。
足を止めた者よ。世界の真理を追い求める者達よ。
どうか、この虫籠の中を覗いてみてほしい。
きっと諸君等を阻(はば)んでいる、閉ざされた扉を開くための鍵が手に入るはずだ。
理想郷への道は、すぐそこにある。
一つはひぐらし。
ようこそ。お疲れでしょう、ゆっくり身も心も休めてください。
ここがあなた様達が求め探していた場所です。
いかなる望みも、願いも叶えられる。
嘘など申しておりません。紛(まが)うことなき真実ですとも。
疑うならば、試してごらんなさい。
言の葉の力が、あなた様の願望をたちまち叶えることでしょう。
ただし、楽園にいらっしゃる方はあなた様だけではございません。
すぐに他の方々も集まることでしょう。
願いと願いが搗(か)ち合い、望みと望みが鍔迫(つばぜ)り合いを始める。
ええ、そうです。
あなた様が魂(いし)を持つ限り、争いから逃れることはできません。
さあ、いかがいたしますか?
あなた様の選択――見届けさせていただきます。