あらすじ
――この世は苦しみに満ちている。
――生まれてくると、人は必ず苦しみを味わう。
――なにより僕は、この場所に産み落とされた悪意だった。
惰性で見ていたテレビを消すように。疲れたマグロが泳ぐのをやめるように。仲間外れにされた少年が一人で先に家に帰るように。僕は生きることをやめることにした。
生きる希望も目的も理由も動機も、僕には決定的に足りていなかったのだと思う。
僕とこの世界を繋ぐものはもう何もありはしなくて、どうせ繰り返しの毎日ならショートカットしても構わないだろう。
これ以上生き恥をさらさぬうちに。これ以上償うことのできない罪を重ねずに済むように、僕は死ぬことにした。
どこか人とずれたところのある少年、椎名光は、大好きだった姉を交通事故で失くす。
姉のいなくなった世界で光は、悲しみを怒りに代えることも、
喪失を憎しみで埋めることもできないまま、黒い春を生きる。
それから、とあるひとりの女性と出会い……