あらすじ
僕たちは、自分を何と呼べば良いのかも分からない曖昧な存在で、それでも、出会いたいと願う一人がいて、それなのに、出会ってしまえば臆病になって手放す始末だーーー
高校入学に合わせて東京から引っ越してきた西山くんと、クラスに馴染めない浅田さんは、お互いの優しさを頼りに親しくなる。
初めて二人で下校した日。
春や桜について話していると、ある人を思い出さずにはいられなかった浅田さんは、出会ったばかりの西山くんに涙を見せてしまう。
迷いながらも、西山くんに過去の話をした浅田さんは、この人がずっと出会いたかった人だと、西山くんを特別な存在に思う。
北海道の本当の春の中、自然と始まった二人の下校時間は、穏やかで、優しい時間だった。
でも、恋とか友情だと断定しない、曖昧な関係を続ける二人には、当たり前のように噂が流れ始めてしまう。
浅田さんと中学からの同級生の菅野は、悪気なく、二人の噂が流れるきっかけを作ってしまったのだが、付き合ってもない思春期の男女がわざわざ二人で下校することに疑問を抱いていた。
浅田さんとは違いクラスの人気者で、サッカー部で、ハッキリと物を言う菅野だったが、菅野にも思うところはあってーーー
噂に流されず、気にしないフリをしてまでも、二人の下校を続けていた浅田さんと西山くんだが、二度目の本当の春の季節。
「西山くん。一緒に帰るの、今日で最後にしてもいい?」
浅田さんは、西山くんとの曖昧で、それでこそ大切だった時間から自ら逃げる決意をした。
曖昧な気持ちと向き合うことを避けた。
浅田さんの決断に西山くんは何を思ったのか。
西山くんは、何かを伝えるのか。
そして、曖昧でこそ大切だった時間に、永遠というものはないのか。
本当の自分が何なのかも分からない不安定さは、穏やかな青春さえも奪ってゆく。