あらすじ
目が覚めると、そこは見知らぬ樹海——。
ここは…地球じゃない…。
憶えているのは、頭の中で響いたあの不気味な声。
森をさ迷っているところを異民族に捉えられ、拘束される。
牢の前に現れた東南アジア系の若い男、ウダ。
チャンドラの村。そこで引き合わされた“ナカシロ”という名の老人。
——二日前。
この村で無差別殺傷事件が起きた。
村の若者がなんの前触れもなく村人達を、刃物を手に襲いかかったという。
“おぬし、殺したい人間がおるであろう”
——ナガタノリコ。
これまで他人に話したことなどない。何故この老人が知っているのか。その女を殺そうとおもっていた。しかも、その女の名まで。
村人を襲いながら、若者がその女の名を口にしたという。
“ナガタノリコハドコニイル。コロシテヤル。”
タガログ語しかわからないはずの若者が、日本語で…。
チャンという名のその誠実な若者に会ってもらいたいと、ナカシロが言う。彼を救ってやりたいと。ウダと二人、チャンが繋がれている村の地下牢に向かうことになるのだが…。
——この二人は、まだなにかをかくしてる。
彼らが“領域”とよぶこの世界はなんなのか。
自ら命を絶った〈魂〉は、いったいどうなるのか。
おれ自身が生み出したと言う、得体の知れない化け物。
そして、ナガタノリコと同じ気を放つ謎の女。
宗教戦争。民族紛争。部族抗争。イスラーム。コカの葉。阿片…。
この領域の時代のうねりと得体の知れない闇。その渦の中へと、次第に飲み込まれていく——。
人を殺したいと思うほどの、怒りと憎しみが生み出す闇とは……。新たな異世界ハードボイルドに挑戦する。