あらすじ
これは運命を恋人と共に失くし、十数年後にある女に依って取り戻す男の物語。
『私達が済む世界は数多の可能性の連なりであり、今のこの現実はその1バリエーションに過ぎない』
これが僕こと千島(ちしま)の彼女、千恵(ちえ)の口癖だった。
多世界解釈に根ざした発言、彼女は現実を現実感を持って生きれないらしい。
僕はそんな千恵に運命はあると言い続けたのだが―
彼女は18のある朝に死を選んでしまう。
僕は彼女の死と共に運命を失くした。
…現実なんて。数多の可能性の連なりの中の一部を無作為に選択しているに過ぎない。
そう、千恵と同じ思想を持つに至ったのだ。
それからの日々は。空虚なものだった。
現実感がないのだ。
僕は生活を送りながら、幾度か自殺未遂をしている。
特に理由のある話じゃない。ただ。死んでみようと思っただけだ。
30歳のある日。僕は山に自殺に出かける。
そして山の森で酒を呑んでいたら―
ある女の子と出会い、自殺を阻止されてしまう。
その彼女の名前は―千絵(ちえ)という。
それに一瞬運命を感じたが…僕は以前の思考に戻ってしまう。
32歳のある日。バーで呑んでいたら。
千絵と再会した。
僕は思わず声をかけてしまう―