あらすじ

記憶喪失の中国人少年マーは大阪でNPO法人職員アンナと知り合う。一旦姿を消したマーは無銭飲食の疑いで逮捕され、アンナが警察で通訳としてマーと再会する。 失ったパスポートが見つかり、マーは中国・トルファン出身と判明する。マーは公安部に追われている両親と一緒に逃れていた台湾で襲われ、記憶を失って大阪に来たことがその後わかる。そんなこととはつゆ知らず、NPO法人理事長の古賀は同棲する職員・黒澤玲とアンナをマーに付き添わせてトルファンに派遣し、親を捜させた。 公安部はマーが元公安部長で台湾に逃亡している羅承基の息子であることを掴み、マーが再び中国に舞い戻ったことから、台湾で出会った羅親子が破壊工作でも画策していると疑い、三人を危険人物としてマークする。 古賀は敦煌に駐在している友人の赤間幸雄に三人の安全を確保してくれと依頼する。赤間はビジネスジェットを使い、三人を台湾に移送しようとするが、マーは莫高窟の菩薩に記憶の回復を祈願したいと強く訴える。マーは四歳の頃交通事故で右脚に大けがをし、菩薩にその快癒を祈願して両親が通ったことがあったが、その記憶が戻らないまま、マーは菩薩詣でを繰り返す。不思議な霊力を持つウイグル少年アルキンの力も借りてマーには少しずつ過去の記憶が戻り始めた。 しかし、満願を待たずに公安警察の追跡を振り切るため赤間のジェットは飛び立ち、福建省東岸の街厦門(アモイ)に到着し、一行は古賀と合流する。マーは両親と再会したが記憶が戻らない。台北でマーが中国公安部に身柄を拘束され、北京に移送されるという事件があったが、拘束されたのはマーにそっくりな別人だったことが判る。その間、マーは再び莫高窟に行き、満願を果たした。すると記憶が蘇り、両親はマーが幼い頃、羅の息子と知りつつ、施設から引き取り育て上げた養父母だったことを思い出す。 マーには別の施設にいた双子の弟がいる。兄弟は、将来の公安部長として嘱望された羅承基を父に、羅が捜査先で知り合った愛人・メイファンとの間に生まれたのだ。羅は本妻のホンファと娘のリンユーの本宅とメイファンとの家族の二重生活を送っていた。 ある時羅の行動に不審を抱いたメイファンに正体を知られ、離婚だの告発だのと脅迫される。羅は保身のため、知り合いの殺し屋にメイファンを殺させ、残った息子二人を地方の施設に預けた。 羅は殺人容疑者として台湾に逃亡。羅はホンファとの結婚式に招いた北京での同窓生・陳浩然に救われ、交流を続けながら十五年の歳月が流れた。陳は羅の結婚式の折、突然スピーチを依頼され、錚々たる人物の前で大恥をかいたことがトラウマになっている。しかし、それを問わずに羅と付き合っていた。陳浩然、実はメイファンの実兄だった。羅と結婚して幸せになるはずの妹が羅に殺害されたことを当然知っている。その昔、陳は子供が出来ない妻の希望で、養子にとったのがミンヤンだった。ミンヤンは中学の頃陳の逆鱗に触れ、既に殺害されていた。友人の顔を装いながら次は憎き羅の始末だ。焦らずにゆっくりあの世に送ってやる。 羅は遼と偽名を使い、趣味になった温泉通いでマーと出会い、話し合ううちにマーは遼が実の父親だと知る。 陳は中国から送り込まれている公安部特殊部隊のスナイパーを買収し、羅に「メイファンは自分の妹だ」と知らせた上で狙撃させ、殺害する。残るは妹の純粋な血を汚した羅の不純な血が流れるマーだ。  陳は大阪にミンヤンと瓜二つの男を送り込み、マー殺害を実行させるが、その試みは失敗し、今度は自分で殺そうと大阪に現れた。 古賀と赤間は陳の動きを察知し、二人で陳を拘束してこれまでの犯行を次々と告白させた。しかし、陳は逮捕された警察でのちょっとした手違いから、警察を脱走、NPO法人の事務所に立て籠もり、アンナを人質にとって銃口をマーに向ける。陳は妹が産んだミンヤンを殺害した時とは異なる感情が沸き起こるのを感じていた。このアンナとかいう女が、たとえ羅の息子ととはいえ、その将来を約束した女だとすれば、やがて二人には新しい命が生まれる。  三人目の子を宿し、その子のために肌着を縫っていると嬉しそうに話していた妹の姿が羽交い絞めにしているアンナの温もりと重なった。 その途端、陳はアンナを突き放して解放し、自らの頭を銃で撃ち抜いた。「俺を妹が眠っている故郷の墓に埋めて欲しい」そう言い残して陳は事切れる。 マーはその後アンナと結婚し、新婚旅行を兼ねて台湾の父と弟の墓に詣でた。先に墓に詣でる三人家族がいた。父に対する憎しみを克服したリンユーの家族だった。奇しくも、羅の異母兄妹が父・羅の墓前で初めて顔を合わせたのだった。マーはそのあとで中国・永定の方角を向いて、母・メイファンの冥福を祈った。

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カクヨム2023/09/23
  • 現在の作品記憶を捜す少年