あらすじ
昔々、運命の女神の加護を受けた少女がいた。彼女の唄には神の一欠けらの力が宿り、作物を実らせることも、恵みの雨を降らすこともできた。
少女は心根が優しく、種族を問わず平等に接し、歌姫として慕われていた。皆が皆、歌姫の力に縋ってきたけれど、少女は文句を言うことも、我儘を言うこともなく手を差し伸べた。
国を揺るがす災厄が訪れる。作物が実らず、雨も降らない、魔物は増え、暗雲が立ち込めた。誰かが言った、これは歌姫のせいなのだと。歌姫が陥れようとしているのだと、そう人々に避難されても少女は言い返さない。
「お前がやってないなら、この災厄から国を救ってみせよ」
国王にそう言われて少女はゆっくりと瞼を閉じた。
「この身を捧げれば、きっと豊穣は約束されますでしょう」
少女は言う。けれど、それは百年までであると。私が眠りから覚めれば、再び災厄は訪れる。そうならないように百年の間、この国が犯した罪を償ってほしいと。
そうして、少女は深い森の奥に建てられた塔の一番上で唄を紡ぎ、深い眠りへとついてしまった。
歌姫が百年の眠りから覚めるまでもう間もなく――