あらすじ
——西暦3,810年
人類は、惑星への移住——テラフォーミングを可能にした未来で、二つの陣営に分かれて争っていた。
一つは、連合。
太陽系惑星間連合(Solar System Inter Stella Union)、SSISU。
通称「連合」。
地球を中心に、月、火星、タイタン、カロンなどで構成される、太陽系の支配者である。
そこは、『AIとの共存』を掲げて、人間とアンドロイドが、太陽系の開発と統一を目指す、進歩的な世界。
連合において、人間とは、義務や労働、そして寿命からも解放され、娯楽や趣味に興じる、桃源郷を現出した、ある種の、勝者。
或いは、生ける屍に堕した、ある種の、敗者。
もう一つは、同盟。
木星衛星間条約機構(Jupyter Inter Satellite Treaty Organisation)、JISTO、またはその衛星の発見者に因んで、ガリレオ同盟。
通称「同盟」。
ガス惑星である木星の衛星、エウロパ、イオ、カリスト、ガニメデで構成される國家。
そこは、『人類の復興』を掲げて連合の支配を脱し、アンドロイドを否定した、人間の尊厳を追求する、復古的な世界。
同盟において、人間とは、義務を負い、労働に勤しみ、寿命に束縛され、喜び、怒り、哀しみ、楽しみを営む、ある種の、賢者。
或いは、同じ過ちを繰り返す、ある種の、愚者。
連合と同盟。
両陣営は、長きに亘り、そのイデオロギーをぶつけ合い、血を流し、斃れ、それでも互いに譲らなかった。
始まりは、凡そ百年前。
当時、連合の自治州だったエウロパ。とある家庭。
その幼児の一言が、パンドラの匣を開けてしまった。
父は、その言葉に耳を疑った。
鼓動が、早鐘のように胸を、叩く。
そして、立ち上がった。
——アンドロイドは、出ていけ!
奪われたものに気が付いた民衆たちは、総督府を襲撃し、戦火は瞬く間にエウロパ全土に拡がった。
それが、百年前。
すべての始まり。
その蜂起は、四年後、同盟の成立で終結する。
二億人を超える、血で贖って。
つまり、第一次星間大戦、または同盟独立戦争である。
そして、三十年前。
太陽系の統一を目指し、連合が仕掛けた、戦争。
後手に回った同盟は、敗北に敗北を重ね、本土に追い詰められ、滅亡を覚悟した、戦争。
勝利を確信した連合の前に、あの英雄が現れた、戦争。
開戦から二十年後、同盟の勝利で終結する、戦争。
つまり、第二次星間大戦、または二十年戦争である。
そして、西暦3,810年——
時を超え、今日、ケレス沖で鉾を交える、同盟と連合。
それは、国境の版図を巡る、ただの鍔迫り合いか。
それとも、大戦への序曲か……
——これは、ある千年紀に、深紅の血潮で刻まれた、人類の叙事詩。
つまりは、クリムゾン・ザ・ミレニアム——
* * *
以上、第一章「英雄」より抜粋。
◯ご案内
スペースオペラ「クリムゾン・ザ・ミレニアム」第一幕「屑星の宇宙(そら)」が開演しました。みなさま、お誘い合わせの上、ぜひご来場ください。
ガリレオ同盟首都、新東京「オペラ座」にて、不定期に公演。