あらすじ
「この世界のために、力を――命を使いたいのです。私を愛してくれたすべての人のために」
◇
誰だって恐ろしい魔族の王子になんて嫁ぎたくない。私だって本当に、いやだった。
でも私が嫁ぐことで、魔族との戦争が止むのなら、私の犠牲も意味があるはず……!
決意を胸に魔王城にひとりで輿入れした私、カトリーヌ。
魔王は恐ろしい一つ目のミノタウロスだし、城の使用人たちはみんなモンスター。常識も人間とはずいぶん違うみたいで驚くことばかり。何度失神しかけたことか!
でも恐ろしい見た目と違って、みんなとても優しくしてくれた。
え? 魔族ってみんな残忍なんじゃないの? じゃあ人間と魔族ってどうしてずっと争ってたの?
それに王子は、見たことないくらい美しくて、美しすぎて逆に怖いくらい。
あんまり喋ってくれないし、無表情だし、政略結婚だから私に興味がないのかな、と思ったら、ぽつりと吐く言葉は甘くてドストレート。
心臓がドキドキして苦しい。私たち、いい夫婦になれるかも、なんて期待してしまう。政略結婚なのに、幸せになっていいのかな……。
幸せが怖い私の心を、王子と、魔王城のみんなが少しずつ柔らかくしてくれた。
幸せな新婚生活のなかで、不思議な感覚が芽生えた。
王子に触れられたり、優しい言葉をもらったり、使用人のみんなの温かさに触れると、ぽわん、と暖かな風が体の中に生まれるのだ。王城では優しくされたことが無いから、優しくされたときの感覚って分からなかった。ぽわん、ぽわん、が積み上がっていくと、さらに不思議なことが起こった。未来を見る力――《先見の力》が開花したのだ。
不安に思って王子に見てもらうと、元々持っていた力を封じられていたのが、解放されたみたいだった。封じられたのは赤ちゃんの頃。封じたのは、亡くなったお母様。
お母様の設けた解放条件は恐らく――「愛」を受け取ること。どうしてそんな解放条件にしたのかしら?
疑問に思いながら過ごしていたある日、人間側が和睦を破って攻めてくる未来を見てしまった。
そして私は気づいた。
「愛をくれた魔王城のみんなに、愛を返したい。私の力はきっとそのためにあるんだわ」
禁忌である未来の大改変に臨む私を、王子は止めようとした。
王子に心配をかけるのは辛い。でも、私の覚悟は変えられない。とうとう王子は一緒に作戦を決行しようと言ってくれる。
「僕は、二人の未来を一緒に受け止めたい」
そうして私達は、魔族と人を越えた、すべての民の平和のための作戦を開始した――。