あらすじ
推している少女二人の行動を見つめていたい語り手と、そんな視線にうんざりしてどこまでも逃げてゆく少女たちによる果たしない追いかけっこの行先は?
ちょっと不思議な百合短編です。
※以下のあらすじには結末の展開も含まれています。
ミッションスクール聖ルチア女学園高等部二年に所属する二人の少女、睦月亜衣と嶋利和音がとある日の放課後から消息を絶つ。二人が学内でも有名な恋人たちであったこと、名士の娘である亜衣に見合い話が持ち上がっていたこと等から駆け落ちとみられた二人の出奔を、ルチアの乙女たちのある者は憧れのまなざしみつめで、またるものは冷笑する。乙女たちがさんざめく学園の中で唯一二人の出奔の真相を知るのは、物語の語り手である「私」だけ。いつ何時でも私に見られることを嫌悪した二人は、視線を感じる学園から逃げ出そうとしたのだが、二人のことを語ることが存在意義で私は物語世界の枠を踏み越えてまで逃げる二人についてゆき二人の行動をつぶさに語ろうとする。亜衣と和音の二人は当然逃げに逃げる。
語り手であることから私が優勢のように思われたこの勝負だが、油断と慢心をつかれて私は逆に聖ルチア女学園の出てくる物語の世界に番人である読み手とともに名もない一少女という立場で閉じ込められてしまう。登場人物兼語り手になってしまった私にはもはや物語の外に出てゆく力はなく、読み手とともにその世界で暮らすしかなかった。
そういった理由から読み手のことをきらっていた私だが、私がノートにしたためる物語を通じて距離が縮まってゆき、いつしか二人の意識が亜衣と和音のものになっていることに気付く。読み手の誘導によってそう語らされていたことに気付いた私は、それを受け入れ最終的には睦月亜衣に変化する。そしてともに嶋利和音になった読み手とともにもう一度学園の外に出るのだった。