あらすじ
その男は傍から見れば普通だった。
友達が多いわけでも、少ないわけでもなく、どこにでも居る王城の騎士の指導役として働く普通の男だった。
ただ、犯罪を犯そうとしたことがないのか? と聞かれれば、素直に首を縦に振ることは出来なかった。
理由としては単純だ。
犯罪を犯そうとしたことがあるからだ。
ならば何故、その犯罪を犯さず、今も普通に生きているのか。
それは、まだ男が23歳と若かったからだ。
まだ人生は長い。だと言うのに、犯罪なんて犯して、誰かに追われ、命を狙われる人生なんて嫌だったからだ。
そんな人生を送るくらいなら、このまま普通に生きて、普通に幸せを掴んで、普通に死ぬほうが楽しいと思った。だから、犯罪なんて犯さなかった。
だったら、もしもそう考えた時のその男が若くなかったのなら? 例えば、60代後半……いや、50代後半の老人であったのならば? 答えは簡単だ。
意気揚々として、犯罪に手をかけただろう。
どうせ残り少ない人生なんだ。
好きに生きよう。楽しく生きよう。自分のやりたいように生きよう。
そう思ったはずだ。
これはそんな男が、余命一年宣告を受け、男の中の何かが崩れてしまい自由に生きる話。